保管料の削減策として、3PL事業者との坪単価交渉を検討している方は多いのではないでしょうか。しかし実際には、保管料は「坪単価」だけで決まるわけではありません。在庫回転率・滞留日数・作業負荷などの要素が保管コストの水準を左右しており、単価交渉だけでは根本的な改善につながらないケースが多くあります。
本記事では、保管料が高くなる構造的な原因を整理したうえで、坪単価交渉以外のアプローチで実際にコスト削減を実現するための具体策を解説します。
保管料とは?どのように決まるのか
物流倉庫の保管料は、多くの場合「坪単価×使用面積」または 「使用量・在庫量に応じた従量課金」 という形で請求されます。しかし、この数式だけでは実態を正確に表しきれません。実務上の保管コストは、次の要素の組み合わせで概ね決まります。
保管コスト=在庫量 × 滞留日数 × 作業負荷
つまり、同じ坪単価であっても、「在庫が長期間動かない」「入出庫のたびに付帯作業が多い」という状態では、実質的なコスト負担は膨らんでしまうのです。3PL契約においても、固定費型(スペース確保型)と変動費型(入出庫量連動型)では費用構造が異なり、自社の在庫動態に合わせた契約形態の見直しも検討の余地があります。
倉庫保管料削減が求められる理由
以下の3つの要因が重なり、多くの企業で保管料削減の優先度が高まっています。
EC市場拡大による多品種少量化
EC流通の拡大にともない、取り扱うSKU(在庫管理単位)数が増加しています。品種が増えれば保管スペースの需要が増し、管理工数も増加します。季節変動や販売動向の読みにくさが増す中で、不動在庫が発生しやすい構造になっています。
【参考】経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
在庫コストの可視化要求
経営層からキャッシュフロー改善や在庫資産の圧縮を求める声が高まっています。在庫は資産である一方、保管・管理・廃棄にかかるコストを含めた「保有コスト」全体を可視化したうえで、適正な在庫水準を設定する必要があります。
物流費全体の上昇
2024年4月に施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限されました。輸送コストの上昇が続く中で、倉庫賃料も上昇傾向にあり、物流費全体の見直しを迫られている企業が増えています。
【参考】全日本トラック協会「物流の2024年問題」
倉庫保管料が高くなる3つの原因
保管料削減に取り組む前に、コストが高止まりしている原因を正確に把握することが重要です。主な原因は次の3つです。
不動在庫・滞留在庫の放置
動きの少ない在庫が倉庫スペースを長期間占有し続けることが、保管コストを押し上げる最も一般的な要因です。「いつか売れる」という判断を繰り返すうちに処分のタイミングを逃し、スペースコストだけが積み上がっていきます。ABC分析を実施しても、C品目の処分基準が曖昧なままでは対策につながりません。
入庫・出庫タイミングのミスマッチ
需要予測の精度が低い場合、過剰な発注やまとめ仕入れが発生しやすくなります。安全在庫の設定が過大であったり、リードタイムを考慮せずに一括仕入れを行ったりすると、実際の需要と在庫量の乖離が広がり、滞留につながります。
作業負荷の高い保管方法
ロケーション管理が最適化されていない倉庫では、ピッキングの動線が長くなり、作業者の移動時間が増加します。作業時間が長くなるほど人件費が膨らみ、3PL事業者への委託コストにも影響します。付帯作業の多さも、実質的な保管コストを引き上げる要因のひとつです。
坪単価交渉以外の削減アプローチ:3つの具体策
具体策1:滞留在庫の可視化と処分基準の明確化
まず着手すべきは、「動かない在庫」を数値で把握することです。SKUごとの在庫回転率を算出し、一定期間(たとえば90日以上)動きのない在庫を抽出します。そのうえで、処分方法(アウトレット販売・返品・廃棄など)の優先順位と基準を明文化し、月次でレビューする仕組みをつくります。
ABC分析と組み合わせることで、処分対象を効率よく特定できます。保管スペースの削減だけでなく、在庫評価損の抑制にもつながります。
【滞留在庫削減 実行ステップ】
90日以上動きのない在庫を抽出する
SKU別の在庫回転率を算出する
SKUごとの処分基準(方法・判断者・タイミング)を策定する
月次でレビューし、基準を運用に定着させる
具体策2:適正在庫の算出と発注サイクルの見直し
過剰在庫を防ぐには、「いつ・どれだけ発注するか」という発注設計を見直す必要があります。需要予測の精度を高め、安全在庫の計算式(例:需要変動に対する安全係数×リードタイム)を実態に即した数値で再設定するところから始めましょう。
カテゴリや季節変動を考慮したうえで発注ロットを最適化し、場合によってはサプライヤーとのリードタイム短縮交渉も有効です。発注サイクルを適正化することで、過剰在庫の発生を抑え、保管期間の短縮・キャッシュフローの改善につながります。
具体策3:保管効率を上げる運用設計
在庫のロケーション(保管場所)を回転率別に再配置することで、ピッキング動線を短縮し、作業時間を削減できます。よく動く商品を取りやすい場所に集約し、縦方向(高さ)のスペースも有効活用することで、同一面積でのスループットを高めることができます。
WMS(倉庫管理システム)と連携してロケーション最適化ルールを設定し、商品特性(温度管理・サイズ等)に応じた保管方法を定め、定期的に見直す運用が効果的です。
よくある失敗パターンと注意点
保管料削減に取り組む企業の多くは、次のような落とし穴にはまりがちです。対策を進める前に、よくある失敗パターンを確認しておきましょう。
坪単価交渉のみに注力する
滞留在庫が残ったままでは、単価を下げても保管コストの構造は変わりません。3PLとの関係を消耗するだけになるリスクもあります。
過度な在庫削減
欠品による販売機会の損失と顧客離れを招きます。コスト削減と在庫水準の適正化はセットで設計する必要があります。
システム導入のみで完結させる
WMSやERPを導入しても、現場運用・教育・モニタリングが伴わなければ定着しません。ツールは運用設計の補助手段です。
よくある質問
Q. 保管料はどのくらい削減できますか?
削減幅は現状の在庫状態や運用方法によって大きく異なります。滞留在庫が多い場合、それを解消するだけで保管スペースが圧縮できることもあります。まず現状の在庫データを整理し、どこにボトルネックがあるかを把握することをお勧めします。
Q. 坪単価交渉は意味がないのですか?
無意味ではありませんが、在庫の滞留や回転率の問題を解決しないまま単価だけを下げても、コスト構造の改善にはつながりにくいです。在庫運用の見直しと並行して行うことで、より大きな効果が期待できます。
Q. 小規模な企業でも実施できますか?
はい、可能です。まず在庫データの整理と滞留在庫の洗い出しから始めれば、大規模なシステム投資がなくても改善を進めることができます。着手しやすい施策から段階的に取り組むアプローチが現実的です。
Q. WMSを導入すれば保管料は改善しますか?
WMSはロケーション管理や在庫の可視化に有効なツールですが、導入だけでコストが下がるわけではありません。発注ルール・処分基準・ロケーション配置の運用設計が伴ってはじめて効果が出ます。
まとめ
保管料削減の取り組みにおいて、坪単価交渉は入り口のひとつに過ぎません。保管コストを構造的に下げるには、「在庫を持ちすぎない仕組みをつくること」が不可欠です。
【保管コストの構造】

具体的には、まず90日以上動かない在庫を洗い出し、処分基準を設けて月次でレビューする仕組みをつくることから始めます。並行して、安全在庫の再計算と発注ロットの最適化によって過剰在庫の発生を抑え、ロケーションを回転率別に最適化することで作業時間とスペース使用量の削減につなげます。
これら3つの取り組みは順番に進める必要はなく、現状のボトルネックがどこにあるかを把握したうえで、着手しやすいところから始めることが現実的です。まず現状の在庫データを整理し、滞留在庫の状況を把握するところから取り組んでみてください。








保管料削減を「坪単価交渉」だけで解決しようとするアプローチは、根本的な改善には至りません。在庫が動かない仕組みそのものを見直さない限り、保管料は再び積み上がります。
SBフレームワークスでは、在庫が滞留しにくい運用設計を重視し、発注・保管・処分のルールを一体で見直す支援を行っています。発注サイクル・ロケーション管理・処分基準を一体として設計し、まず滞留在庫の可視化から着手するアプローチをとっています。「どこから手をつければいいかわからない」という段階からでも、ご相談をお受けしています。