HOMESCM・戦略物流KPIによる可視化・物流DX・共同物流ーー競争優位性はどう作るのか

物流KPIによる可視化・物流DX・共同物流ーー競争優位性はどう作るのか

物流を経営戦略として機能させるためには、KPI管理による可視化と継続的な改善サイクルの確立が不可欠です。物流の現状をデータで把握し、課題を定量化して初めて、DXを含む適切な打ち手を選べるようになります。一方で、KPIをどう設定すればよいか、共同化やDX・自動化をどう推進すればよいかに悩む経営層の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、物流KPIによる可視化、DX・省人化への取り組み、業界横断的な物流スキームの構築という3つの軸から、持続的な物流を行うための取り組みについてお伝えします。

事業戦略と物流戦略が分断される3つの課題

多くの日本企業では、物流領域に共通する構造的な問題を抱えています。

物流が「後工程」として扱われる構造的問題

日本企業では、事業戦略の策定プロセスに物流が組み込まれていないケースが多くあります。新商品開発・マーケティング・販売計画が優先され、物流部門には完成した計画が「あとは実行を」と後から伝達されるケースが典型的です。たとえば、新商品の全国一斉発売が決定した段階で初めて物流部門に通知が届き、発売日に向けた配送手配を行うといった状況が日常的に起きています。

こうした構造では、物流の実現可能性や必要なリソースが事前に検討されないまま計画が走り出します。物流部門は急な物量増加に対応するため無理な輸送手配が生じ、倉庫スペースを緊急確保するといった無理が生じます。物流部門が「言われたことをこなす後工程」として扱われ続ける限り、非効率なオペレーションが繰り返されます。

事業戦略と物流戦略の分断が招く経営リスク

事業戦略と物流戦略の分断は、次のようなリスクをもたらします。これらのリスクに共通するのは、「事業計画と物流キャパシティが噛み合っていない」ということから発生します。

・成長機会の損失(大型案件を受注したが物流キャパシティ不足で対応不可)

・コスト増加(非効率な物流対応で輸送費や保管費用などが想定を超過する)

・顧客満足度の低下(配送遅延・欠品が頻発し顧客離れを招く)

・従業員の疲弊(無理な対応を強いられた現場の離職率の上昇や人材不足の深刻化)

2030年に向けてさらに深刻化する物流

対策を講じない場合、2030年には輸送能力の34.1%が不足するという試算(国土交通省)が示すとおり、物流上の制約は今後さらに強まります。「今の事業規模なら何とかなる」という前提は、2030年に向けて通用しなくなる可能性があります。持続的な物流戦略の設計は、今や経営の必須要件となっています。

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物流KPIの設定と可視化によるデータドリブン経営への転換

物流を経営で管理するために必要なKPI体系

物流を経営戦略として機能させるためには、まずKPIによる定量管理の仕組みが必要です。物流KPIは大きく「コスト」「品質」「効率」「持続可能性」の4軸で整理できます。これらのKPIを定義し、定期的に計測・モニタリングする仕組みを作ることが、データドリブンな物流経営の出発点です。

リアルタイム可視化ダッシュボードの構築

KPIを設定したうえで重要なのが、「リアルタイムでの可視化」です。在庫・輸送・販売・コストのデータを統合したダッシュボードを構築することで、物流の現状をリアルタイムで把握し、意思決定に活用することができます。物流現場では、入出庫や保管の停滞、輸送停止などのリスクが日常的に発生し得ます。これらを個別に把握するのではなく、サプライチェーン全体で統合的に可視化することが重要です。

KPIに基づくPDCAサイクルと継続的改善

効率的なオペレーションを行うためには物流KPIを可視化したうえで、PDCAサイクルを回し続けることが必要になります。在庫回転率を起点として発注ルールを見直す、積載率を起点として配送頻度や輸送ルートの検討を行うなど、KPIが具体的な改善につながる仕組みを作ることが重要です。またKPIを定着させるためには、定期的なモニタリングとレビューを行うPDCAサイクルが不可欠です。CLOの重要な役割の一つは、この改善サイクルを組織に定着させることです。

 持続可能な事業運営のための物流DX・自動化・省人化

属人的作業からの脱却:物流DXが急務である理由

少子高齢化による担い手不足が加速するなか、「人が集まればなんとかなる」という属人的なオペレーション設計はすでに限界を迎えつつあります。こうした背景のもと、物流DXの取り組みが加速しています。物流DXとは、自動倉庫の設置や単に倉庫内にロボットを入れることではありません。発注業務・在庫管理・輸送手配・請求業務といった工程を自動化することや意思決定を自動化するプロセスも含まれます。倉庫管理システム(WMS)の高度化、配送管理システム(TMS)との連携、需要予測におけるAIの活用——これらを段階的に組み合わせることで、「属人的な物流からの脱却」の実現が可能になります。

自動化・省人化投資の経営判断:ROIで評価する

倉庫自動化のためのマテハン(AGV・ロボットピッキング・自動仕分けなど)は初期投資が大きく、経営判断のハードルが高い領域です。しかし、2030年に向けて労働コストが上昇し続けることを前提にROIを試算を行い、準備を進める必要があります。重要なのは「現在の人件費コスト」ではなく、「将来の想定人件費・採用困難コスト」を前提にした評価を行うことです。こうした投資判断はCLOが主導してROI評価を行い、経営会議で意思決定を推進する必要があります。中期経営計画の視点から「2030年の物流体制をどう確保するか」を検討することで、投資判断が現実的になります。

2030年に向けた業界横断的・企業横断的な取り組み

共同物流の戦略化:競合を超えた「物流連帯」

2030年に対策を講じなければ全国で輸送能力の34.1%が不足するという試算は、現在の物流スキームが「個社それぞれのトラックで輸送する」という構造を前提としています。この前提を変えることが、共同物流の意義です。

大手コンビニでは東北地方の一部地域でアイスクリーム・冷凍食品を対象とした混載共同輸送を開始しています。直接の競合関係にある大手コンビニ2社がトラックを共同使用するという取り組みは、「物流効率化のためには業界・企業の壁を越えることが不可避」という実態を示しています。同様の動きは食品・飲料・日用品業界などで広がっており、CLOがこの「共同化」を主導することが求められます。

フィジカルインターネット構想:物流の未来標準

業界横断的な共同物流の形が、政府が主導する「フィジカルインターネット」構想です。インターネットのパケット通信の仕組みを物流に応用し、荷物を標準化されたモジュールに分割して、複数の輸送手段・物流拠点を経由しながら効率的に届けるという次世代物流のビジョンです。

経済産業省・国土交通省は2022年に「フィジカルインターネット・ロードマップ」(政府レベルのロードマップとしては世界初)を策定し、2040年の実現を目標としています。このロードマップが実現すれば、現状の低い積載率を共同輸配送の推進により向上させ、輸送力不足の解消が進むと試算されています。また、経済産業省・国土交通省は、フィジカルインターネットの完成により2040年時点で11.9〜17.8兆円の経済効果が生まれると見込んでいます。2024年5月には、大手商社やメーカーなどがフィジカルインターネットの事業化に向けた共同検討の覚書を締結しました。荷主企業がこうした業界横断的な共同物流スキームに参画・対応できる体制を整えることも、CLOが担うべき重要な役割のひとつです。

【物流戦略の経営統合チェックリスト】

□ 中期経営計画策定時に、物流要件(キャパシティ・投資・コスト)を同時に検討している

□ 物流KPI(コスト・品質・効率・持続可能性)が経営会議の定期報告資料に含まれている

□ 事業部門と物流部門がKPIに基づく定期的な改善会議の場を持っている

□ 倉庫自動化・DX投資を中期経営計画の文脈でROI評価したことがある

□ 共同物流・フィジカルインターネット構想への参画可能性を検討したことがある

 複数項目に当てはまらない場合は、物流がまだ経営管理の対象として十分に扱われていない可能性があります。まずは物流KPIの定義と可視化から始めるのが現実的です。

高﨑 洋輔 
[監修者の視点] SBフレームワークス 営業責任者

部分最適を超えた物流戦略が企業の未来を決める

「自社の中だけで考える物流」の終焉
経営戦略として物流を考える場合、これまでのような部分最適の思考では物流の持続性に限界が生じてしまい、引いては企業経営に影響を及ぼしかねません。自社の物流コスト削減・自社の在庫最適化・自社の輸送効率向上という「自社内の最適化」は必要条件ですが、それだけでは不十分な時代になっています。人口減少・カーボンニュートラル要請・フィジカルインターネット構想の進展——これらの変化は、「自社だけの物流戦略」では対応しきれない課題を突きつけています。こうした中、DXによる物流高度化と、企業間・業界間の協調による共同物流への参画は、これからの物流戦略の両輪です。CLOは、自社の物流KPIを経営に接続しながら、同時に業界全体の構造変革を見据えた長期戦略を描く役割を担っています。2030年・2040年という時間軸での問いに答えられる経営幹部が、今まさに求められています。

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サプライチェーン可視化とは?導入メリット・方法・ツールをわかりやすく解説

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サプライチェーンを効率的に管理し、最適化するには、在庫・輸送・リードタイムなどの主要データを「可視化」することが重要です…

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まとめ

物流を経営戦略として機能させるためには、「KPIによる可視化→データドリブンな意思決定→DXと自動化への戦略的投資→業界横断的な共同物流への参画」という一連の流れに経営として主導することが必要です。

2030年に向けた輸送能力の不足、そして2040年を目標とするフィジカルインターネット構想の進展は、「物流をどう戦略的に設計するか」が企業の競争力を左右する時代の到来を告げています。CLOはKPIとデータを軸に物流を経営戦略に統合し、自社の物流力を競争優位の源泉に変えるための経営幹部です。今から動けるかどうかが、2030年に向けた競争力の差を大きく左右します。

【参考情報】

・帝国データバンク「2024年問題に対する企業の意識調査」(2024年1月、有効回答11,407社)

・国土交通省「2024年問題」関連資料(2030年に輸送能力34.1%不足の試算)

・NECソリューションイノベータ「2023年版物流システムリサーチ結果」(2023年、300名対象)

・経済産業省・国土交通省「フィジカルインターネット・ロードマップ」(2022年3月策定、2040年目標)

・経済産業省「フィジカルインターネット実現による経済効果試算:11.9〜17.8兆円(2040年)」(2025年2月)

・ローソン・ファミリーマート「東北地方における冷凍品共同輸送の開始について」(2024年4月)

・伊藤忠商事・KDDI・豊田自動織機・三井不動産・三菱地所「フィジカルインターネット事業化に関する覚書締結」(2024年5月)

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用語解説

SCM(Supply Chain Management)

サプライチェーン全体を統合的に管理し、調達・生産・物流・販売の各プロセスを最適化する経営手法。部門や企業の壁を越えてデータを共有し、全体最適を実現することで、コスト削減とサービスレベルの向上を目指す。

サプライチェーン

原材料の調達から生産、在庫管理、物流、販売、消費者への配送に至るまでの一連の供給の流れ。各工程が連鎖的に繋がっており、全体を最適化する視点が求められる。

物流DX

物流業務全体(配送・輸送・倉庫保管・荷役・包装・流通加工)をIT・AI・IoTなどのデジタル技術を活用して根本から変革する取り組み。単なるシステム導入や紙の電子化ではなく、業務プロセスや判断基準、役割分担を再設計し、持続可能な物流体制を構築することを目的とする。

KPI(Key Performance Indicator)

目標達成の度合いを測るための定量的な指標。物流では、誤出荷率、在庫回転率、積載率、配送リードタイム、出荷生産性などがKPIとして用いられる。DXの効果測定においても、事前にKPIを設定し、改善度合いを数値で把握することが重要とされる。

BCP(Business Continuity Plan)

災害やパンデミックなどの緊急事態が発生した際に、事業の中断を最小限に抑え、早期復旧を図るための計画。物流ではサプライチェーンの代替ルート確保や在庫の分散配置などが含まれる。

監修者プロフィール

高﨑 洋輔 

SBフレームワークス 営業責任者

物流現場の最前線で20年以上、日々のオペレーションから改善活動まで数多く経験。現場目線とデータの両面から課題を整理し、顧客の業務に合った物流ソリューション提案を日々行う。LOGi INSIGHTでは、ロジスティクスのヒントをわかりやすく解説します。

監修者詳細 →

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