積載効率の改善に取り組んでいるにもかかわらず、なかなか数字が動かないと感じている物流担当者も少なくないでしょう。対策を講じているはずなのに現場で効果が出ない場合、その原因は多くの場合「意識の問題」ではなく、構造的な部分にあります。
積載効率が上がらない根本的な理由は、容積・重量・混載制約という3つの軸を分けて分析できていないことにあります。この分解なしに輸配送管理システム(TMS)を導入したり、ルート最適化を進めたりしても、現場では計算どおりに積めないという状況が繰り返されます。
本記事では、積載効率が上がらない構造的な原因を分解し、現場で実際に数字を動かすための改善手順を解説します。
積載効率とは何か──定義と2つの判断軸
積載効率とは、トラックやコンテナの最大積載能力に対して、実際にどれだけ積めているかを示す指標です。積載効率を評価するには、「重量ベース」と「容積ベース」の2つの軸で見ることが基本になります。
積載率(重量ベース)の計算式
積載率は、最大積載重量に対して実際の積載重量がどの程度かを示します。
積載率(%)=積載重量 ÷ 最大積載重量 × 100
例えば、最大積載重量が4tのトラックに2tの貨物を積んだ場合、積載率は50%です。ただし、積載率は往復の平均値で判断するのが基本です。往路が積載率50%であっても、帰り荷がなければ復路は0%となり、往復平均では25%まで下がります。帰り荷の確保が積載効率に大きく影響する理由がここにあります。
容積占有率(スペースベース)も合わせて見る
重量ベースの積載率だけを指標にすると、実態を見誤るケースがあります。「かさは小さいが重い貨物」を積んだ場合、重量ベースでは積載率100%になっていても、荷台のスペースは余っているということが起こります。逆に「軽くてかさばる貨物」では、スペースは埋まっていても重量に余裕があるケースもあります。
積載効率を正確に把握するためには、重量と容積の両方を記録し、どちらにボトルネックがあるかを確認する習慣が必要です。
日本の積載効率の現状
国土交通省の「自動車輸送統計調査」によると、2024年度の営業用車両の積載効率は41.3%で前年度から1.4ポイント改善しました。ただし、政府の「物流革新に向けた政策パッケージ」では、2030年度までに全体の車両で積載効率44%、5割の車両で50%の実現を目標に掲げており、目標値との開きはまだ大きい状況です。
この背景には、EC市場の拡大にともなう小口・多頻度配送の増加があります。一度の配送で積載する荷物量が減り、積載効率が構造的に下がりやすい環境になっているのです。
しかし、積載効率低迷の原因は「荷物の量が少ないから」だけではありません。多くの現場において、荷物の絶対量よりも「積み方の設計ができていない」ことが問題になっているのです。
【参考】国土交通省「自動車輸送統計調査」
【参考】国土交通省「検討の背景② 物流を取り巻く現状と課題」
積載効率が上がらない3つの構造的原因
原因1:容積と重量を別々に管理していて、どちらに余裕があるかが見えていない
多くの現場では、重量か容積のどちらか一方しか管理していないため、もう一方に余裕があることが見えていません。「重量はまだ積めるのにスペースが足りない」「スペースには余裕があるのに重量は上限に近い」といった非効率が放置されると、配車計画を見直す手がかりが生まれにくくなります。
原因2:混載制約が整理されないまま運用されている
商品の相性、温度帯、荷主間の取り決めなど、「一緒に積めない」制約が多い場合、積載スペースに空きが生まれやすくなります。問題は、その制約が担当者の経験則や暗黙の了解によって管理されており、本当に混載できないのか、条件次第で可能なのかが明文化されていないことです。「混ぜられない」という前提が固定化されたまま運用が続くと、改善の余地が見えにくくなります。
原因3:荷姿・梱包・パレットが非効率なまま放置されている
段ボールのサイズがバラバラだったり、パレットの寸法が統一されていなかったりすると、トラック荷台にデッドスペースが生まれます。また、積み重ねができない梱包形状では、高さ方向のスペースが無駄になります。TMSや配車最適化ツールを導入しても、荷姿が乱れていれば計算どおりに積めない──この状況が、「仕組みを入れたのに効果が出ない」という結果につながっています。
改善の最優先は「荷姿・梱包・パレット」の見直し
積載効率の改善に取り組む際、多くの企業がTMSの導入や共同配送の検討から始めます。しかし、荷姿や梱包、パレット規格が整っていない状態でシステムを導入しても、現場では計算どおりに積むことができません。
優先すべきは、荷主と連携して段ボールの外装サイズやパレット規格を揃えることです。サイズが統一されることで、トラック荷台のデッドスペースが削減され、積み下ろし作業も簡略化されます。また、段積みが可能な梱包設計にすることで、高さ方向のスペースを有効活用できるようになります。
荷姿の改善はコストが比較的低く、効果が出やすい取り組みです。システム導入はその土台が整ってから検討するのが現実的な順序です。
出荷量の波動と締め時間がボトルネックになる理由
荷姿の見直しと並行して意識したいのが、出荷量の波動と締め時間の管理です。
月末出荷の集中、セール期、季節商品など、繁閑の波動が大きい現場では、ピーク日に合わせた車両手配が常態化します。その結果、閑散期には車両に余剰が生まれ、積載効率が下がりやすくなります。
締め時間の設定も積載効率に影響します。締め時間が早すぎると、複数の小口荷物を積み合わせる機会が間に合わず、半積みのまま出庫せざるを得ない状況が生まれます。波動を週次・月次で可視化し、締め時間やルート設計を柔軟に見直すことが、継続的な積載効率改善につながります。
改善事例
積載効率改善の考え方を具体的にイメージするために、代表的な事例を見てみましょう。
重量物と軽量物の混載により積載効率を向上|大王製紙株式会社×サントリーグループ
大王製紙株式会社とサントリーグループは、2022年から長距離輸送の効率化のために共同配送を開始しています。飲料製品などの重量物を積んだトレーラーは、重量制限の関係でトレーラー上部に空きが生じやすい状態でした。そこで、相対的に軽量な大王製紙の紙製品をその空きスペースに混載することで、積載効率を高めました。この取り組みは令和5年度物流パートナーシップ優良事業者表彰の「強靱・持続可能表彰」部門賞を受賞しています。
共同輸送による閑散期の積載効率改善|久留米運送・第一貨物・トナミ運輸
久留米運送、第一貨物、トナミ運輸の3社は、閑散期の土曜日に東京〜大阪間で共同輸送を実施しました。それまで各社が別々に運行していた便を2便に集約することで、積載効率の向上と運行コストの削減を実現しています。
【参考】国土交通省「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」
改善の順番──現場で動く進め方
積載効率の改善は、以下の順番で進めることが現実的です。
Step 1:現状の積載率・容積占有率を計測・記録する
計測なしに改善はできません。重量ベースと容積ベースの両方を記録し、どちらに問題があるかを把握することが出発点です。
Step 2:荷姿・梱包・パレット規格を統一する
最もコストが低く、効果が出やすい取り組みです。荷主と連携しながら外装サイズやパレット寸法の標準化を進めます。
Step 3:混載制約を洗い出し、整理する
暗黙の了解になっている混載NGルールを明文化し、本当に混載できないのか、条件次第で可能なのかを荷主・商品カテゴリ単位で整理します。
Step 4:波動・締め時間を見直す
繁閑のデータを可視化し、ルート設計・配車計画の最適化に活かします。
Step 5:TMS・共同配送などの仕組みを導入する
土台が整ってから、システムや共同配送の仕組みを検討します。
現場チェックリスト──今日から使えるセルフ診断
自社の積載効率に課題があると感じたら、まず以下の項目を確認してみてください。
□ 重量ベースの積載率と容積占有率を両方記録しているか
□ 帰り荷(復路の積載)を意識した配車計画になっているか
□ 段ボール外装・パレットサイズが複数混在していないか
□ 混載NGの根拠が明文化されているか(慣習でNGになっていないか)
□ 繁閑の波動データを月次・週次で把握しているか
□ 締め時間が積み合わせの機会を潰していないか確認したか
よくある質問
Q. 積載効率と積載率は何が違うのですか?
積載率は「最大積載重量に対して実際にどれだけ積んだか」を重量ベースで示す指標です。一方、積載効率はより広い概念で、重量ベースの積載率に加えて容積の占有率も含めた総合的な評価を指します。重量は余っているのにスペースが埋まらないケースもあるため、両方の観点から見ることが大切です。
Q. 積載効率の目安・基準はありますか?
国土交通省の調査によると、2024年度の営業用車両の積載効率は41.3%です。ただし、業種や取扱商材、配送頻度によって適正水準は異なります。まず自社の現状値を計測し、継続的に改善できているかどうかを管理することが重要です。
Q. 積載効率を上げるには、まず何から手をつければいいですか?
まずは、現状の積載率と容積占有率を計測・記録しましょう。その上で、荷姿・梱包・パレット規格の統一に取り組むことが、低コストで効果の出やすい改善策です。TMSの導入や共同配送の検討は、この土台が整ってから行うことをおすすめします。
Q. 共同配送は中小企業でも取り組めますか?
取り組める可能性はあります。ただし、共同配送を成立させるには、配送先が近隣・共通の荷主企業との連携が前提になります。まずは周辺エリアの同業者や取引先との協議から始めるとよいでしょう。取り組みのハードルが高い場合は、混載対応の運送事業者やフォワーダーへの相談も選択肢の一つです。
まとめ
積載効率が上がらない原因は、容積・重量・混載制約の3つを分解して把握できていないことにあります。改善の優先順位は、荷姿・梱包・パレット規格の統一です。TMSや共同配送などの仕組みは、この土台が整った後に導入を検討する。これが適切な順序です。
また、出荷量の波動と締め時間の管理が継続的な積載効率改善のボトルネックになりやすい点も見落とせません。現場で積める状態を設計することが、改善の出発点です。







積載効率の改善について相談を受けるとき、多くの企業がTMSや共同配送から話を始めます。しかし現場を確認すると、段ボールサイズの不統一、パレットの混在、担当者の経験則による混載判断といった課題が解決されないまま残っているケースが少なくありません。
「積める設計」になっていない荷物を前にして、どれだけ精緻に配車計画を立てても、現場では積めません。積載効率の改善は、計測から始まり、荷姿・梱包・制約の整理を経て、その後に仕組みの導入へと進む順番が重要です。
重要なのは、この改善の順番を間違えないことです。積載効率は、「現場で積める状態」をつくって初めて数字が動くという前提で考える必要があります。