トラック・物流Gメン(旧:トラックGメン)とは?勧告事例や指導に応じない場合の罰則も紹介

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
トラック・物流Gメンは、トラック運送事業者の労働環境の改善を図るために、荷主の不当な要求や違反行為に対して是正指導を行う部隊です。
長時間の荷待ちや過積載になる依頼など、ドライバーの労働環境を悪化させる要求は、トラック・物流Gメンの是正指導の対象となります。トラック・物流Gメンの指導を受けないためには、物流現場の実態把握などの取り組みが欠かせません。
本記事では、トラック・物流Gメンの是正対象となる違反原因行為や是正指導に応じない場合の罰則、勧告事例などを紹介します。
ドライバーの労働条件や物流業務に関する規制が厳しくなるなかで、自社の物流を効率的に運営していきたい場合は、SBフレームワークスにご相談ください。物流業務全般を包括的にサポートし、最適な運用方法を提案いたします。
目次
- 1 トラック・物流Gメン(旧:トラックGメン)とは
- 2 トラックGメン(トラック・物流Gメンの旧組織)創設の背景
- 3 トラックGメンがトラック・物流Gメンに改組された背景
- 4 トラック・物流Gメンは何をする?
- 5 トラック・物流Gメンの是正指導対象となる違反原因行為
- 6 トラック・物流Gメンの活動実績
- 7 トラック・物流Gメンの是正指導が行われた事例
- 8 トラック・物流Gメンの是正指導に従わなかった場合の罰則
- 9 トラック・物流Gメンの是正指導を受けないために荷主が実施すべき取り組み
- 10 違反原因行為を発見したら?トラック・物流Gメンの連絡先
- 11 トラック・物流Gメンから指摘を受けることがないよう適切に業務を遂行しよう
トラック・物流Gメン(旧:トラックGメン)とは

トラック・物流Gメンとは、不適正な取引をしている疑いのある荷主企業や元請事業者の監視を強化するために、国土交通省が創設した部隊です。
国土交通省は、2024年11月時点で全国に総勢360名規模のGメンを配置し、トラック運送事業者や倉庫業者から荷主の情報を収集して不当な要求があれば是正指導を行っています。
近年、物流業界では荷主による無理な要求や運賃の不払いなど、ドライバーの労働環境を悪化させる問題が多発しています。
物流業界の環境改善と適正な取引を確保するために、トラック・物流Gメンは欠かせない存在です。
参考:
国土交通省「「トラックGメン」について」
国土交通省「トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します」
トラックGメン(トラック・物流Gメンの旧組織)創設の背景

トラック・物流Gメンは、もともと「トラックGメン」と呼ばれる組織でした。
トラックGメン創設の背景には、物流業界における2024年問題が関係しています。2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務従事者の時間外労働時間の上限規制が適用されたことで、物流の停滞が懸念されている問題です。
上限規制のもとで荷物の輸送を円滑に遂行するためには、荷主による非効率・理不尽な商慣行の見直しが欠かせません。
しかし、トラック運送事業者と荷主とでは運送事業者のほうが立場的に弱い傾向にあり、長時間の荷待ちや契約にない業務の要求などの商慣行を強いられている実態があります。
2024年問題をきっかけに生じるさまざまな問題を防ぐために、2023年7月にトラック・物流Gメンの旧組織にあたる「トラックGメン」が創設され監視が強化されるようになりました。
参考:国土交通省「トラックGメン始動!」
トラックGメンがトラック・物流Gメンに改組された背景

もともと「トラックGメン」として活動していた組織は、2024年11月に「トラック・物流Gメン」に改組されました。
旧組織のトラックGメンは、主にトラック運送事業者から荷主の行為を情報収集する組織でした。
しかし、トラック運送事業者に対する違反原因行為は、物流の結節点となる倉庫においても生じえます。たとえば長時間の荷待ちや過積載などは、倉庫を監視することで初めて発覚するかもしれません。
そこで国土交通省は、倉庫業者からも、トラック運送事業者に対する違反原因行為に関する情報収集を実施することとしました。こうして誕生したのがトラック・物流Gメンです。
参考:国土交通省「トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します」
トラック・物流Gメンは何をする?

トラック・物流Gメンは、主に以下のことを行っています。
- 違反原因行為の有無に関する情報収集
- 荷主に対しての是正指導
それぞれの活動内容について解説します。
参考:国土交通省「「トラックGメン」について」
違反原因行為の有無に関する情報収集
トラック・物流Gメンの活動内容の一つは、法令違反の恐れがある「違反原因行為」に関する情報収集です。
運送事業者や倉庫業者に対し電話や倉庫などへの現場訪問により、労働環境を悪化させるような荷主の要求がないか聴き取りを行います。
また、国土交通省のポータルサイトに設置された相談窓口や目安箱などからも、ドライバーの実際の労働状況に関する情報を集めています。
荷主に対しての是正指導
トラック・物流Gメンは、収集した情報をもとに現場の状況確認を行い、違反原因行為の疑いがある場合は荷主に是正指導をします。是正指導は、以下のように段階的に実施します。
- 働きかけ
- 要請
- 勧告・社名公表
まず、違反原因行為の疑いのある荷主に働きかけを実施します。働きかけは「運送事業者のコンプライアンスを確保するには、荷主の配慮が重要である」と理解してもらうことが目的です。
荷主の違反原因行為への疑いに合理的な根拠がある場合には、働きかけをせずに改善の要請をすることもあります。
要請したにもかかわらず改善が見られない場合は勧告を出し、法的措置や社名の公表が行われます。
また、その後のフォローアップ調査も是正指導の一環です。フォローアップ調査では、違反原因行為について情報提供を行った運送事業者や、過去に問題のあった荷主に対して改善が行われているかを確認します。
トラック・物流Gメンの是正指導対象となる違反原因行為

トラック・物流Gメンの是正指導の対象となる主な違反原因行為には、以下が挙げられます。
- 長時間の荷待ち
- 過積載になる依頼
- 無理な到着時間の設定
- 異常気象時の無理な運行指示
- 依頼にない附帯作業
- 運賃や料金の不当な据置き
- ドライバーの拘束時間超過
それぞれの違反原因行為について解説します。
参考:国土交通省「「トラックGメン」について」
長時間の荷待ち
長時間の荷待ちは、トラック・物流Gメンの是正指導の対象となる違反原因行為です。長時間の荷待ちが常態化すると、ドライバーの疲労が蓄積し居眠り運転などの事故を引き起こす可能性があります。
また、ドライバーには時間外労働時間の上限があるため、規定時間内に荷物を運べなくなることも考えられます。
ドライバーの安全確保と法令遵守の観点から、長時間の荷待ちが発生している場合は迅速な改善が必要です。
過積載になる依頼
過積載になる依頼は、トラック・物流Gメンの是正指導対象になります。過積載とは、車両に定められた最大積載量以上に荷物を積載した状態で運行することです。
過積載での走行は、「走る・曲がる・止まる」の車両本来の性能を発揮できず、事故のリスクが大幅に増加します。自重が想定より重くなるため、事故が起こった際の被害も甚大となりやすいです。
過積載による事故や違反は、ドライバーのみならず運送事業者や荷主にも責任が生じる可能性があります。事故や法的な責任を回避するためにも、過積載を避けることは重要です。
無理な到着時間の設定
無理な到着時間の設定は、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象です。
到着時間の不合理な要求は、ドライバーに過度なプレッシャーを与え、最高速度超過を引き起こす要因になります。また、ドライバー自身だけでなく、他の道路利用者にも危険をおよぼす可能性があります。
安全な運行を確保するためには、無理のない到着時間の設定が必要です。
異常気象時の無理な運行指示
異常気象時の無理な運行指示は、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象となります。大雨や強風、落雷などの異常気象時には、安全運転が困難だからです。
たとえば、大雨で視界が悪くなり衝突事故が発生する、強風によりトラックが横転する事故が発生するなどの恐れがあります。
また、輸送安全確保義務違反を招く可能性もあります。輸送安全確保義務違反とは、輸送の安全を確保する義務に違反し、ドライバーや他の道路利用者を危険にさらす行為です。異常気象時には安全を最優先に考え、無理な運行指示は避けるべきです。
依頼にない附帯作業
依頼にない附帯作業を強要すると、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象となります。契約外の無償作業をドライバーに求めると、ストレスや疲労が蓄積し業務に支障をきたす恐れがあるためです。
具体的には、契約にない手作業での積込作業やラベル貼り、検品の強要などが違反原因行為に該当します。
無償で契約にない業務を強いることは、下請法や独占禁止法に違反する可能性があるため注意が必要です。
運賃や料金の不当な据置き
運賃や料金の不当な据置きは、トラック・物流Gメンの是正指導対象です。荷主の都合だけで運賃や料金の引き下げを求めることは、違反原因行為と判断されます。
さらに、契約内容の変更により追加運賃が発生した場合にその負担を拒む行為も、公正な取引とはいえないため是正指導の対象です。
また、十分な協議なしに運賃や燃料サーチャージなどの価格交渉に応じないことは、下請法や独占禁止法に違反する可能性があります。そのため、運賃や料金に関する取り決めは、必ず契約にもとづいて行う必要があります。
ドライバーの拘束時間超過
ドライバーの拘束時間を超過させる行為は、トラック・物流Gメンの是正指導対象となります。
ドライバーの拘束時間は、原則として1日13時間以内であり、延長しても15時間までが限度です(※1)。拘束時間を超過すると、疲労が蓄積しドライバーの健康が損なわれたり、安全な運行ができなくなったりする恐れがあります。
配車時刻までに荷揃えが終わらず長時間待機させたり、荷主の指示で労働時間のルールを守れなかったりした場合、ドライバーの集中力の低下を招き事故の発生リスクが高まります。
※1参考:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」
トラック・物流Gメンの活動実績

トラック・物流Gメンの旧組織にあたる「トラックGメン」は2024年9月時点で、荷主や元請事業者に対し累計1,091件の是正指導を行っています。是正指導の内訳は、以下のとおりです。
勧告 | 2件 |
要請 | 175件 |
働きかけ | 914件 |
また、是正指導対象となった違反原因行為の割合は、以下のとおりです。
違反原因行為 | 割合 |
---|---|
長時間の荷待ち | 52% |
契約にない附帯業務の依頼 | 17% |
運賃や料金の不当な据置き | 14% |
無理な運送依頼 | 8% |
過積載運送の指示・容認 | 6% |
異常気象時の運送依頼 | 3% |
出典:国土交通省「「トラックGメン」について」※2024年9月時点
違反原因行為のなかでも、長時間の荷待ちが多発しています。違反原因行為は、ドライバーの働き方や安全に影響を与えるため、引き続き監視と指導が続けられています。
トラック・物流Gメンの是正指導が行われた事例

トラック・物流Gメンの是正指導が行われた事例を3つ紹介します。
料金の不当な据置きに対する働きかけの事例
運送事業者からトラック・物流Gメン(国土交通省)に「某農産品取扱企業の荷主と燃料サーチャージに関する交渉が難航している」との相談が寄せられました。
事実確認をするためにトラック・物流Gメンは、荷主にヒアリングを実施。事実確認後、荷主はトラック・物流Gメンからの働きかけを受け、燃料サーチャージを全額支払う契約を運送事業者と取り交わしました。また、積荷料金の見直しも行われています。
参考:国土交通省「働きかけの実施事例」
長時間の荷待ちに対する要請事例
トラック・物流Gメンが製造業の発荷主に対して、長時間の荷待ちを改善するよう要請した事例です。
当時、昼過ぎからトラックが待機し、夕方18時頃になってようやく積み込みが始まる状況が常態化していました。また、昼に受付をしても荷待ちが長時間におよび、夜19時まで待機することもありました。
長時間の荷待ちを改善するためにトラック・物流Gメンが働きかけをしましたが、改善が見られなかったため要請を実施。要請に応じて、発荷主は以下の改善策を実行しました。
- 入構時間の指定
- 出荷口の増設
- 搬送先付近の倉庫を「中継地点」として活用
改善策の実施により、1時間以上待機するトラックの台数比率が大幅に減少しました。
参考:国土交通省「要請の実施事例」
複数の違反原因行為に対する勧告事例
某大手運輸会社に対し、トラック・物流Gメンが複数の違反原因行為に関する勧告を行った事例です。当時、全国に点在する運輸会社の複数の拠点で以下のような違反原因行為が発生していました。
- 長時間の荷待ち
- 運賃・料金の不当な据置き
- 過積載運行の指示
トラックGメンが違反原因行為の是正を要請したところ、一部は改善が見られました。しかし、その後の調査で依然として違反行為が継続していることが判明。要請後もなお違反原因行為を継続していたため、勧告を実施しました。
勧告を受けて、運送会社は改善計画を提出しました。今後の改善状況は、ヒアリングや現地訪問により確認し、改善が見られない場合は法的措置が検討されています。
参考:国土交通省「ヤマト運輸株式会社に対する「勧告」(概要)」
トラック・物流Gメンの是正指導に従わなかった場合の罰則

トラック・物流Gメンの是正指導に従わない場合、以下の罰則が科される場合があります。
違反内容 | 罰金 |
---|---|
法律で定められた改善命令に違反 | 最大100万円以下の罰金 |
所定の届出や報告義務を怠った場合 | 50万円以下の罰金 |
虚偽の報告をした場合 | 50万円以下の罰金 |
対応を怠ると企業の信頼や業務の継続に影響をおよぼす恐れがあります。トラック・物流Gメンから是正指導を受けた際には、速やかに改善措置を講じましょう。
参考:e-GOV法令検索「物資の流通の効率化に関する法律」
トラック・物流Gメンの是正指導を受けないために荷主が実施すべき取り組み

トラック・物流Gメンの是正指導を受けないためには、以下のような取り組みを実施することが大切です。
- 物流現場の実態を把握する
- 物流業務の効率化を図る
- 運賃を適正化する
それぞれの取り組みについて解説します。
物流現場の実態を把握する
トラック・物流Gメンの是正指導の対象にならないためには、物流現場の実態を把握しておくことが重要です。
定期的にドライバーや現場の従業員にヒアリングをして、長時間の荷待ちなどが行われていないか確認しましょう。また、必要に応じて改善策を検討することも大切です。
物流現場の現状把握の目的は、トラック・物流Gメンの是正指導を回避するためだけではありません。より効率的で安全な物流体制を構築するためにも必要です。
物流業務の効率化を図る
トラック・物流Gメンの是正指導を受けないためには、物流業務の効率化が欠かせません。
物流業務を効率化することで荷待ち時間や荷役時間の短縮が可能となり、結果的に積載率の向上にもつながります。荷待ち時間の短縮を図るためには、貨物の適切な受取日時や引渡日時を指示する予約システムの導入が有効です。
また、荷役時間を短縮する方法には、パレットの利用や入出庫の効率化に有効な資機材の配置などが挙げられます。
参考:経済産業省「「流通業務の総合化および効率化の促進に関する法律 および貨物自動車運送事業法の⼀部を改正する法律」 の施⾏に向けた検討状況について」
運賃を適正化する
運賃を適正化し、トラック・物流Gメンの是正指導を受けないようにしましょう。運送事業者と十分に協議し、双方が納得できる価格に設定する必要があります。
また、契約内容は書面化しておきましょう。書面化しておけばトラック・物流Gメンの調査が行われた場合に、契約内容が適正であることを証明できます。
違反原因行為を発見したら?トラック・物流Gメンの連絡先

違反原因行為を発見したら、トラック荷主特別対策室に連絡しましょう。
また、国土交通省の目安箱を利用して情報提供も可能です。違反原因行為の情報を提供すれば、迅速な改善が期待できます。また、情報提供は物流業界全体の安全性向上にもつながります。
トラック・物流Gメンから指摘を受けることがないよう適切に業務を遂行しよう

トラック・物流Gメンは、物流業界の労働環境改善を目指し荷主の監視を強化しています。とくに、長時間の荷待ちは頻繁に発生している違反原因行為であり、トラック・物流Gメンの是正指導の対象となります。
是正指導を受けることがないよう自社の物流業務を見直し、問題点がある場合は早急に改善しましょう。
物流業務の見直しや改善に関してお悩みがある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。ソフトバンクグループの物流を30年以上支えてきた経験とノウハウをもとに、具体的な運用方法を提案します。
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