物流の2024年問題とは?何が起きる?対策とともにわかりやすく解説
監修者プロフィール
SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
物流の2024年問題とは、時間外労働の上限規制によりトラックドライバーの労働時間が短縮され、従来通りの輸送ができなくなると懸念されている問題です。
ドライバーの時間外労働の上限を守りながら輸送量を維持するためには、配送方法や物流業界の慣習などの課題を解決しなければなりません。
本記事では、物流の2024年問題の概要や物流業界への影響、企業が検討すべき対策を解説します。
物流の2024年問題に伴う課題や懸念がある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社では混載便サービスや独自の輸送網を構築しており、物流の2024年問題に対する解決策のご提案が可能です。
目次
物流の2024年問題とは
物流の2024年問題とは、2024年4月から自動車運転業務の時間外労働に対して上限規制が適用されたことで、物流の停滞が懸念される問題です。
国土交通省の調査資料では、2024年問題に対して具体的な対策を取らない場合、輸送能力が従来と比べて以下のように不足する可能性があるとされています。
年度 | 輸送能力 |
---|---|
2024年度 | 14.2%不足 |
2030年度 | 34.1%不足 |
現状の輸送量を維持するには、物流企業は2024年問題への早急な対応が求められます。
参考:国土交通省「物流の2024年問題について」
物流の2024年問題は法適用の延期で後ろ倒しになっていた
時間外労働の上限規制によって物流が停滞する問題は、法適用開始が2019年から2024年に延期されたことで、先送りになっていました。
時間外労働の上限規制は、2019年に施行された働き方改革関連法によって定められたものです。
しかし、自動車運転業務や建設事業などは、2024年3月31日まで5年間の猶予期間が設けられ、上限規制の対象外とされていました。当時、猶予期間が設けられた業務は時間外労働が常態化しており、時間外労働の上限と実態がかけ離れていたためです。
猶予期間を設けることで、法適用までの5年間を準備期間とする狙いがありました。猶予期間が終了した2024年4月1日から、自動車運転業務なども時間外労働や拘束時間の規制強化の対象になったことで、「2024年問題」と呼ばれています。
参考:厚生労働省「運輸業の「働き方改革」について」
物流の2024年問題に起因する働き方改革関連法の変更点
物流の2024年問題を引き起こした要因は、以下の働き方改革関連法の変更があったためです。
- 時間外労働が年960時間までに規制された
- 拘束時間が短縮された
- 休息期間が延長した
それぞれの変更点について解説します。
参考:厚生労働省「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」
時間外労働が年960時間までに規制された
働き方改革関連法により2024年4月から、自動車運転業務などの時間外労働が年間960時間までに規制されました。
上限規制に違反して従業員を使用した場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
時間外労働の目安は1ヶ月当たりに換算すると80時間で、拘束時間と休息期間を考慮した調整が必要です。
拘束時間が短縮された
2024年4月以降から休憩時間や仮眠時間を含む拘束時間が、以下のように短縮されました。
従来 | 2024年4月1日以降 | |
1年あたり | 原則:3,516時間以内 上限:上記と同じ | 原則:3,300時間以内 上限:3,400時間以内 |
1ヶ月あたり | 原則:293時間以内 上限:320時間 | 原則:284時間以内 上限:310時間 |
1日あたり | 原則:13時間以内 上限:16時間 | 原則:13時間以内 上限:15時間 |
1年あたりと1ヶ月あたりの上限は、労使協定を結んだ場合のみ延長が可能です。拘束時間が1日で14時間を超える回数は、1週間のうち2回以内を目安に留めなければなりません。
ただし、走行距離が450km以上で、休息期間の場所が自宅でない場合は例外が適用されます。例外では、拘束時間は16時間に延長されますが、例外の適用は1週間のうち2回までに留めなければなりません。
休息期間が延長した
2024年4月から1日の休息期間は、以下のように延長されています。
従来 | 2024年4月1日以降 |
原則:8時間以上 | 原則:11時間以上 下限:9時間以上 |
事業者は自動車運転業務に従事する従業員に対し、勤務終了後から継続して上記の休息時間を取らせる義務があります。
ただし、走行距離が450km以上で、休息期間の場所が自宅でない場合は例外として扱います。例外の場合は、休息期間の下限は継続8時間以上で、例外を適用する回数は1週間のうち2回までが目安です。
物流の2024年問題によって何が起きる?業界への影響
2024年問題が物流業界に与える影響には、以下が考えられます。
- 荷物の輸送に時間がかかる
- ドライバー不足となる
- 物流費が増える
- トラック運送事業者の売上や利益が減少する
- トラックGメンによる荷主企業および元請事業者への取締りが強化される
それぞれの影響について解説します。
荷物の輸送に時間がかかる
時間外労働の上限規制により、荷物の輸送に時間がかかることが懸念されます。従来トラック運送事業者が時間外労働で補填してきた時間分の移動ができず、走行できる距離が短くなるため、日を跨いで荷物が配送されるケースも出てくるでしょう。
緊急や長距離の輸送がこれまで通りにできない可能性があるため、配送業者が即日配達サービスを提供しているなら、場合によっては取りやめを検討する必要もあるでしょう。
ドライバー不足となる
物流の2024年問題によって、ドライバー不足になることが予想されます。時間外労働の賃金によって生計を保っていた従業員は、時間外労働の上限が規制されることで収入が減り、離職する恐れがあるためです。
また、求人を募る際も他業種と比べて収入が少ないと判断された場合は、新たな人材が集まりにくくなることも懸念点として挙げられます。
物流費が増える
2024年問題への対策を取ることにより以下のような経費がかかるため、物流費の増加が懸念されます。
- ドライバー確保のための賃金アップに伴う運賃の値上げ
- 長距離輸送の中継地点などの設置
- 2024年問題へ対応するための新しいシステムの導入
物流費が増えると利益は減少するため、送料無料サービスを利益によって提供している場合は、廃止の検討も必要かもしれません。
トラック運送事業者の売上や利益が減少する
ドライバーの拘束時間の減少によってトラックの稼働率が下がり、荷物の輸送量が減るため、売上や利益が減少する可能性があります。
また、従業員を増やす場合は人件費や教育費がかかるため、一時的な利益減少も懸念されます。
トラックGメンによる荷主企業および元請事業者への取締りが強化される
物流の2024年問題を踏まえて、国土交通省では「トラックGメン」による荷主企業および元請け事業者への取り締まりを実施しています。
トラックGメンとは、ドライバーに対する契約外作業の依頼など、業界慣行の改善を目的として創設された制度です。
ここでいう業界慣行とは、契約にない付帯業務の依頼や現場での過積載の指示などです。トラックGメンは、ドライバーの立場が弱いことを利用した悪質な荷主・元請事業者などへの是正指導を行っています。
是正指導は以下の流れで実施され、勧告された荷主などは企業名が公表される場合もあります。
1.働きかけ | 荷主が違反原因行為をしている疑いがあると認められる場合に実施 |
2.要請 | 荷主が違反原因行為をしていることを疑う相当な理由がある場合に実施 |
3.勧告・公表 | 要請してもなお改善されない場合に実施 |
参考:国土交通省「「トラックGメン」について」
2024年6月末時点では、全国で累計811件の取り締まりが実施されました。
物流の2024年問題を解決するための対策
物流の2024年問題の影響を想定したうえで、解決するための対策は以下のとおりです。
- ITシステムを活用する
- 共同配送により積載率を向上させる
- モーダルシフトを導入する
- ドライバーの待遇を見直し働きやすい環境を整える
それぞれの対策について解説します。
ITシステムを活用する
物流の2024年問題を解決するには、ITシステムなどを活用して業務の効率化を図りましょう。物流のITシステムには、トラック予約受付システムや共同配送のマッチングなどがあります。
ITシステムを活用して無駄な待機時間を解消できれば、輸送能力を維持しながらドライバーの拘束時間の削減が可能です。
共同配送により積載率を向上させる
共同配送によって積載率を向上させて、稼働するドライバーを減らす方法もあります。共同配送とは、複数の荷主が同じトラックに荷物を積載して配送する方法です。
積載量が少ないトラックが複数ある場合、荷物を混載して積載率を上げることで利用するトラックを減らせるため、配送に携わるドライバーの数を抑えられます。
参考:国土交通省「異業種連携による中間拠点を起点にした中継輸送等の推進」
モーダルシフトを導入する
モーダルシフトの導入も、物流の2024年問題を解決する手段として有効です。モーダルシフトとは、トラックなどの車両での荷物の輸送を鉄道・船舶での輸送に代替することです。
車両を利用して長距離輸送をすると移動に時間がかかるため、拘束時間を長く確保しなければなりません。
しかし、鉄道や船舶を利用することで車両での移動距離を減らせるため、従業員の拘束時間を抑えながら効率的に長距離輸送ができます。
参考:国土交通省「モーダルシフトとは」
ドライバーの待遇を見直し働きやすい環境を整える
ドライバーの待遇を見直して働きやすい環境を整え、ドライバーの離職防止および新規採用者の増加を図りましょう。
時間外労働の上限規制によってドライバー一人当たりの稼働が減少します。そのため、輸送量を維持するためには、ドライバーを募らなければなりません。
採用拡大にもっとも直結しやすいのは、賃金の底上げでしょう。
厚生労働省の調査によると、全産業と比較したとき、大型トラックドライバーは26万円程度、中小型トラックドライバーは58万円程度、年間所得額が低いという結果が出ています(※1)。このような背景を踏まえると、賃金を改善することでドライバーを確保しやすくなる可能性があります。
また、完全週休2日制度の導入や福利厚生の充実などの待遇見直しも、ドライバーの離職防止および新規採用者の増加につながるでしょう。
※1 参考:経済産業省「トラック運送業界の2024年問題について」
物流の2024年問題への対策を講じて課題を乗り越えよう
物流の2024年問題を乗り切るには、ITシステムを活用したり輸送方法を変更したりするなどの対策を実施し、輸送にかかるリソースを削減する必要があります。
自社の課題を把握し適切な対策を講じて、物流の2024年問題を乗り越えましょう。
物流の2024年問題への対応に悩んでいる場合は、SBフレームワークスにご相談ください。輸配送方法の最適化や効率的な輸送ができるミルクランサービスの提案など、多岐にわたる方法で各企業に適した解決策を提供します。まずはお気軽にお問い合わせください。
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