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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?メリットや導入手順を解説

物流
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サプライチェーンマネジメントとは

監修者プロフィール

玉橋丈児

SBフレームワークス マーケティング/広報

玉橋 丈児

物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。

サプライチェーンマネジメントは、原材料の調達から消費者へ商品を届けるまでの供給網を最適化し、効率化とコスト削減を実現するための手法です。

消費者ニーズの多様化やグローバル市場の競争の激化などにより、サプライチェーンマネジメントの重要性は高まっています。

本記事では、サプライチェーンマネジメントを導入するメリットや導入手順、成功のために必要なポイントを解説します。

サプライチェーンマネジメントの効率化などに関してお悩みの場合は、SBフレームワークスにご相談ください。混載便やチャータ便などのサービスで、サプライチェーン全体のパフォーマンス向上を支援いたします。

目次

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

サプライチェーンマネジメント(SCM)は、サプライチェーン全体で「物・お金・情報」の流れを効率的に管理し、最適化を図る手法です。

「サプライチェーン」の言葉は「供給の連鎖」を意味し、製品やサービスが消費者に届くまでのプロセスが、鎖(チェーン)のように連なっていることから名付けられました。

物流やロジスティクスは輸送や保管、在庫管理など、主にモノの移動に関する具体的な活動を指しますが、サプライチェーンマネジメントはさらに広範な概念です。生産計画やサプライヤー管理、顧客への販売後のプロセスまでを含みます。

サプライチェーンマネジメントの目的は、原材料の調達から消費者への商品提供まで、サプライチェーン内のすべての工程を無駄なくスムーズにすることです。サプライチェーン全体を最適化し在庫管理やコスト削減を実現することで、迅速な供給体制を構築できます。

サプライチェーンマネジメントは、1980年代初頭のアメリカで始まりました。低迷していたアパレル業界が生産プロセスを見直し、大幅なコスト削減や在庫削減に成功したことが契機です。

アパレル業界の成功事例が他業界にも波及し、1990年代半ばに「サプライチェーンマネジメント」として広く認知されるようになりました。

サプライチェーンマネジメントが注目される理由

サプライチェーンマネジメントが注目される理由には、以下などが挙げられます。

  • グローバル市場での競争が激化
  • 多様化する消費者ニーズへの対応
  • グローバル規模で複雑化するサプライチェーン

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

グローバル市場での競争が激化

現代の企業にとって、国内市場だけでなくグローバル市場を視野に入れた競争力の強化が求められる時代となっています。その中で、サプライチェーンマネジメントは、効率的な経営と競争力向上を実現するための重要な手段です。

世界的に需要が変動する市場では、供給の遅れや品質問題は即座に競合他社への顧客流出につながります。そのため、原材料の調達先や生産拠点の選定では、品質や単価、供給量の安定性、そして地政学的リスクまでをも考慮した、グローバルな視点での最適解が求められるのです。

たとえば、単価が安いだけではなく、納期の正確さや柔軟な対応力を持つ調達先を選ぶことが、長期的な利益確保に繋がります。

また、一部地域への依存を回避するための分散化戦略も重要です。多国間の調達ルートや複数の物流手段を確保することで、突発的な地政学的リスクへの対応力が高まります。

多様化する消費者ニーズへの対応

消費者ニーズが多様化する現代において、企業はサプライチェーンマネジメントを活用し、迅速かつ柔軟に対応することが重要です。

現代の消費者は、品質や価格だけでなく即座に利用できるスピーディーな対応を求めるようになりました。そのため、消費者ニーズに応えられない企業は競争力を失う恐れがあります。

たとえば、アパレル業界では、流行が季節ごとや年ごとに大きく変わるため、昨シーズンの在庫を抱えたままでは売れ残りのリスクが高まります。サプライチェーンマネジメントを導入すれば、需要の変化に応じて在庫を調整できるため、消費者に旬な商品をタイムリーに提供することが可能です。

消費者ニーズに柔軟に対応することで、市場での優位性を確保できるでしょう。

グローバル規模で複雑化するサプライチェーン

サプライチェーンマネジメントが近年注目される背景には、新型コロナウイルス感染症の流行に伴うサプライチェーンの混乱が大きく関係しています。

新型コロナウイルス感染症の流行は、グローバル規模で複雑化するサプライチェーンの一例です。

コロナ禍では各国で外出制限が実施され、港湾作業員の人手不足が深刻化しました。とくに米国西海岸の港では、輸送用コンテナが大量に滞留し各産業の供給網に混乱を引き起こしました。

混乱の影響は米国内にとどまらず世界各国にまで広がり、製品供給の遅れや価格上昇などを招いたのです。

世界的な混乱を経て、企業はリスクに強いサプライチェーン構築を目指すようになり、サプライチェーンマネジメントの重要性が増しています。

サプライチェーンマネジメントを導入するメリット

サプライチェーンマネジメントを導入するメリットは、以下の3つが挙げられます。

  • 製造・配送時間の短縮と全体コストの削減
  • 在庫管理の最適化
  • 需要変動への柔軟な対応

それぞれのメリットについて解説します。

製造・配送時間の短縮と全体コストの削減

サプライチェーンマネジメントを導入すると、製造や配送にかかる時間(リードタイム)が短縮されるため、顧客満足度の向上や全体コスト削減が期待できます。需要予測や在庫管理が最適化され、無駄な生産や遅延を減らせるためです。

また、サプライヤーとの情報共有が円滑になることで、必要な原材料を適切なタイミングで調達しやすくなり、全体の工程の効率化につながる点もメリットです。

在庫管理の最適化

サプライチェーンマネジメントの一環として、物流管理システムなどを利用すればリアルタイムで在庫の状況を把握できるため、在庫の過不足を防げます。在庫の状況が常に可視化されることで需要予測の精度が高まり、適正な量の在庫を維持しやすくなるためです。

さらに、過剰に在庫を抱える必要がなくなり、保管コストの削減につながります。そのため、経営の安定化と利益向上に貢献します。

需要変動への柔軟な対応

サプライチェーンマネジメントを導入することで、需要変動に柔軟に対応できるようになり、販売機会の損失を防げます。サプライチェーン全体でリアルタイムのデータが共有され、より正確な需要予測が可能になるためです。

急激な需要変動にも即座に対応でき、季節商品やトレンド商品など需要が変動しやすいアイテムも最適なタイミングで供給できます

サプライチェーンマネジメントによって安定した供給体制を築くことで、市場での競争力を強化でき、顧客満足度の向上にもつながります。

サプライチェーンマネジメントを導入する際の留意事項

サプライチェーンマネジメントを導入する際は、以下の点に留意しましょう

  • 導入コストがかかる
  • 既存の業務フロー変更に伴い混乱を招く可能性がある

それぞれの内容について解説します。

導入コストがかかる

サプライチェーンマネジメントの導入には、初期費用や運用コストがかかります。ツールやソフトウェアの購入、従業員トレーニング、既存システムとの統合など、さまざまな初期投資が必要です。

また、導入後も定期的なメンテナンスやシステムのアップデート、技術サポートなどのための費用がかかるため、負担となる可能性があります

サプライチェーンマネジメントの導入コストが、得られるメリットに見合うかを慎重に検討することが大切です。

既存の業務フロー変更に伴い混乱を招く可能性がある

サプライチェーンマネジメントを導入すると、既存の業務フローが大幅に変更されるため、当初は混乱を招く可能性があります。とくに従来のアナログ管理からデジタル管理に移行する場合、新しいシステムやデジタルツールに慣れるまで時間がかかるかもしれません。

たとえば、サプライチェーンマネジメントの刷新に伴い、受発注システムの変更や製品情報の管理フォーマットの統一などが必要になります。

そのため、業務効率が一時的に低下し、全体のパフォーマンスに影響が出ることもあるでしょう。導入時の混乱を最小限に抑えるためには、サポート体制を整えることが重要です。

また、サプライチェーンマネジメントでは複数の企業が情報を共有するため、情報セキュリティ対策も欠かせません。

サプライチェーンマネジメントの導入手順

サプライチェーンマネジメントの導入手順は以下のとおりです。

  1. 目的を明確にする
  2. 課題を洗い出す
  3. 専門チームのメンバーやリーダーを決める

それぞれの手順について解説します。

1.目的を明確にする

サプライチェーンマネジメント導入の第一歩は、何を達成したいのかを明確にすることです。

目的を具体的に設定することで、適切な方針のもとでサプライチェーンを効率化しやすくなり、導入の価値を最大化できます。

「リードタイムを20%短縮する」や「在庫管理コストを年間○○万円削減する」、「トラブル発生時の対応時間を平均◯時間以内に短縮する」など、定量的で測定可能な目標を設定しましょう。目標が具体的であればあるほど、進捗や導入効果が把握しやすくなります。

2.課題を洗い出す

目標を設定したら現状の課題を洗い出し、改善すべき領域を明確にします。サプライチェーンのどこに問題があるかわからないまま進めると、適切な改善策を立てられず、期待した効果が得られないためです。

課題を把握するためには、各部門間でヒアリングを行い現場の声を集めるとよいでしょう。

たとえば、製造部門での在庫管理の不備や、物流部門での配送遅延など、現場で発生している課題を把握すれば、強化すべきポイントが明確になります

なお、大規模なサプライチェーンマネジメントシステムを導入する際には、専門のコンサル会社に委託し、課題を客観的に分析・評価するケースが多く見られます。

3.専門チームのメンバーやリーダーを決める

サプライチェーンマネジメントの導入を円滑に進めるためには、専門チームのメンバーとプロジェクトリーダーを決めることが不可欠です。

サプライチェーンマネジメントの導入は、複数の部門にまたがり影響を与えるため、各部門が足並みをそろえて取り組む必要があります。リーダーが明確な方向性を示し、各部門の調整役となることで連携が強まり、導入をスムーズに進めやすくなります。

また、導入効果を引き出すために、製造、在庫、物流などの各部門から専門知識を有するメンバーを選出することも大切です。

4.サプライチェーンマネジメントシステムやサービスを比較・選定する

サプライチェーンマネジメントの導入には、自社のニーズに適したシステムやサービスを慎重に選定することが重要です。

サプライチェーンマネジメントシステムには、業界特化型やマルチ対応型などのさまざまなタイプがあります。自社の業務や課題に適したタイプを選びましょう。

また、システムを選ぶ際には、以下の項目も考慮しましょう。

  • 導入・運用コスト
  • 操作性
  • 導入後のサポート体制

操作が複雑で使いにくいシステムや、サポートが十分でないサービスを選ぶと、導入後に従業員が使いこなせないリスクがあります。十分に比較検討したうえで、自社に適したものを選びましょう。

5.導入効果を測定する

サプライチェーンマネジメントの導入後は、どのような改善効果が得られたかを定期的に評価しましょう。導入効果を定量的に測定することで、目標が達成できているか、新たな課題が生じていないかを把握できます

たとえば、導入前に設定した「在庫コストの削減」や「リードタイムの短縮」などの目標に対して、達成状況を数値で測定します。

新たに課題が見つかった場合は、改善策を講じましょうこのようにPDCAサイクルを回すことで、サプライチェーン全体をさらに最適化できるでしょう。

サプライチェーンマネジメントの成功に必要な条件

サプライチェーンマネジメントの成功には、以下の2つの条件が必要不可欠です。

  • 部門間のスムーズな連携
  • データ分析とPDCAサイクルの実行
  • 経営陣のコミットメント

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

部門間のスムーズな連携

サプライチェーンマネジメントを成功させるためには、調達、製造、物流、販売など複数の部門が連携し、全体の効率を高めることが必要です。

各部門が協力し合うことで、需要変動や計画変更にも迅速に対応でき、サプライチェーン全体の効率が向上します

たとえば、物流部門が生産や販売計画を事前に把握していれば、配送スケジュールの最適化が可能になります。

データ分析とPDCAサイクルの実行

サプライチェーンマネジメントの効率を高めるには、データ分析に加えて、その結果をもとにしたPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)の実行が重要です。

データ分析で得られた需要予測や在庫管理の洞察をもとに、適切な計画(Plan)を立てます。次に、その計画を現場で実行(Do)し、進捗状況や成果をモニタリングして評価(Check)します。

評価で発見された課題や改善点を反映し、次のサイクルで施策を改善(Act)することで、サプライチェーン全体を継続的に最適化することが可能です。

経営陣のコミットメント

経営陣のコミットメントは、サプライチェーンマネジメントの成功を左右する要因です。経営陣がリーダーシップを発揮し、方向性を示すことで全体の成果が向上します。

たとえば、効率的なサプライチェーンを構築するためには、最新のITツール導入や人材育成への投資が必要です。経営陣が長期的な視野でその重要性を理解していると、企業全体でサプライチェーンの最適化に取り組みやすくなります。

経営陣が明確なビジョンと責任感を持ってサプライチェーンマネジメントに関与することで、全体のパフォーマンスが向上します。

サプライチェーンマネジメントを導入している企業事例

サプライチェーンマネジメントを導入している企業事例を紹介します。自社に応用できる点があれば参考にしてください。

花王株式会社|在庫最適化システムで24時間以内に納品する体制を整備

花王株式会社は、日用品や化粧品、医薬品などの製造・販売を手掛ける大手総合消費財メーカーです。同社はサプライチェーンマネジメントを導入し、原材料の調達から販売までを統合管理することで、効率的な製品供給体制を確立しました。

具体的には、全国の物流拠点で在庫最適化システムを活用し、顧客からの受注から納品まで24時間以内に対応できる体制を構築しています。

また、環境に配慮した物流体制としてモーダルシフトを推進し、炭酸ガス排出削減を目指す「エコレールマーク」を取得しています。

参考:花王株式会社「サプライチェーンマネジメント

キリンホールディングス株式会社|持続可能な調達の取り組みを実施

キリンホールディングス株式会社は、飲料・食品事業や医薬事業を展開する大手企業です。同社は持続可能なサプライチェーンを目指し、「キリングループ持続可能な調達方針」を2017年に制定、2021年に改定しました。

「キリングループ持続可能な調達方針」は、人権、労働、環境、腐敗防止に関する国際的基準にもとづき、品質と安全、コンプライアンスを重視する方針です。

たとえば、2021年に「サプライヤー規範」を制定し、サプライヤーに対して人権や環境保護に関する基準の遵守を求めています。

また、定期的にサプライヤー評価やアンケート調査を行い、各サプライヤーの取り組み状況を把握し、改善のアドバイスを実施しています。

参考:キリンホールディングス株式会社「持続可能なサプライチェーン

トヨタ自動車株式会社|品質向上と効率化を追求したトヨタ生産方式を採用

大手自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社は、「トヨタ生産方式(TPS)」にもとづくサプライチェーンマネジメントを導入し、効率的な生産と高品質を追求しています。

トヨタ生産方式の基本となるのは「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」の2本柱です。ジャスト・イン・タイムでは各工程が連携し、部品を必要最小限で管理することで在庫を減らし、注文に応じて迅速に製品を供給します。

また、機械が自動で異常を検知する仕組みを取り入れ、人の手による監視の負担を軽減し、不良品の発生を防止しながら作業効率を高めています。

参考:トヨタ自動車株式会社「トヨタ生産方式

サプライチェーンマネジメントを導入してビジネスの成長基盤を築こう

サプライチェーンマネジメントを導入することで、競争が激化するグローバル市場や多様化する消費者ニーズに、迅速かつ柔軟に対応できる体制が整います。

また、製造・配送にかかる時間(リードタイム)の短縮や、在庫管理の最適化によってコスト削減が見込めます。パンデミックや自然災害などの予測不可能なリスクに対応するためにも、サプライチェーンマネジメントは不可欠です。

サプライチェーンマネジメントを導入してビジネスの成長基盤を築きましょう。

サプライチェーンマネジメントの取り組みに関してお悩みの場合は、SBフレームワークスにご相談ください。

混載便やチャータ便など、企業のニーズに応じた輸配送サービスを活用し、輸送コストの削減や効率化を実現します。まずはお気軽にご相談ください。

監修者プロフィール

玉橋丈児

SBフレームワークス マーケティング/広報

玉橋 丈児

物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。

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