在庫回転率とは?計算方法や業界平均、高めるためのポイントを解説

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
在庫回転率は、在庫管理の効率や経営状況を把握するための重要な指標です。回転率が低い場合は、改善策を講じる必要があります。
しかし、在庫回転率の計算や改善方法がわからず悩んでいる企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、在庫回転率の計算方法や業界平均、在庫回転率を高めるためのポイントを解説します。
在庫回転率に関してお悩みの場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社では在庫管理における課題の洗い出しや改善策のご提案など、在庫管理の最適化に向けたサポートが可能です。まずはお気軽にご相談ください。
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目次
在庫回転率とは?わかりやすく解説

在庫回転率とは、一定期間内で在庫がどれだけ入れ替わったかを示す指標です。主に、在庫管理や経営効率の評価に使用されます。在庫回転率の数値は、以下を意味します。
在庫回転率の数値 | 予想される状況 |
高い | 商品の売れ行きが良く、在庫がなくなるまでの期間が短い |
低い | 商品が売れるまでに時間がかかり、在庫が滞留している |
過剰在庫や欠品を防いで適正な在庫量を維持するためには、在庫回転率を把握しそれに応じたアクションをとることが大切です。
在庫回転率の計算方法

在庫回転率の計算方法には、以下の2つがあります。
- 在庫数を用いた計算方法
- 金額を用いた計算方法
それぞれの計算方法について詳しく解説します。
在庫数を用いた計算方法
在庫数を用いた在庫回転率は、一定期間内における「商品の出庫数」と「平均在庫数量」を用いて以下のように算出します。
在庫回転率=出庫数÷平均在庫数量 |
平均在庫数量とは、一定期間内の在庫数量の平均値です。たとえば、月次単位で平均在庫数量を算出する場合は、以下の計算式を使用します。
平均在庫数量=(月初の在庫数量+月末の在庫数量)÷2 |
一例として、1ヶ月間の出庫数300個、月初の在庫数90個、月末の在庫数110個であった場合、以下のように計算します。
・平均在庫数量=(90+110)÷2=100個 ・在庫回転率=300÷100=3回 |
上記の場合の在庫回転率は3回となり、1ヶ月間で在庫が平均的に3回入れ替わったことを意味します。
また、在庫回転率は全商品の総回転率だけでなく、単品ごとの回転率の分析も必要です。単品ごとの在庫回転率も分析することで、売れ筋商品と動きの悪い商品を特定しやすくなります。
金額を用いた計算方法
金額を用いた在庫回転率は、「売上原価」と「平均在庫高」を用いて以下のように算出します。
在庫回転率=売上原価÷平均在庫高 |
売上原価とは、一定期間に販売された商品の仕入れ原価です。平均在庫高とは、一定期間における在庫の平均金額です。
売上原価と平均在庫高は、以下の計算式で算出します。
・売上原価=期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高 ・平均在庫高=(期首棚卸高+期末棚卸高)÷2 |
たとえば、以下の条件での計算例を見ていきましょう。
- 年間売上原価:135万円
- 2021年度の期初棚卸資産:40万円
- 2021年度の期末棚卸資産:50万円
・平均在庫高=(40+50)÷2=45万円 ・在庫回転率=135÷45=3回 |
2021年度の在庫回転率は3回となり、1年間で在庫が3回入れ替わったことを意味します。
なお、実務的な観点でいうと、適正在庫量を把握・管理する目的で金額ベースの回転率を計算することはほとんどありません。
金額ベースの在庫回転率の計算は、キャッシュフロー管理が目的の場合や、在庫数がすぐにわからない場合に有用です。
在庫回転率の業界平均

在庫回転率は、業種や商品特性によって異なります。中小企業庁が公表している「中小企業実態調査基本調査(2023年)」をもとに算出した、業種別の在庫回転率の年間平均値は以下のとおりです。
業種 | 在庫回転率(年間) |
製造業 | 約7.6回 |
小売業 | 約13.1回 |
飲食料品小売業 | 約31.6回 |
卸売業 | 約14.3回 |
上記の業種別における在庫回転率は、以下の計算式で簡易的に算出しています。
在庫回転率=売上高÷棚卸資産 |
この計算式から得られる在庫回転率は、あくまで「大まかな傾向をつかむための参考値」です。以下の理由から、具体的な在庫管理や商品ごとの詳細分析には向いていません。
- 売上高は個々の商品やカテゴリごとの回転率を反映していない、全体的な金額に過ぎない
- 一時点の棚卸資産をもとに計算すると、在庫の増減や季節変動などが反映されない
「全社の在庫状況をざっくり把握したい」「他社や業界平均と比較したい」などの場合の、初期判断材料として活用しましょう。
参考:中小企業庁「中小企業実態基本調査令和5年確報(令和4年度決算実績) 確報」
競合のおおまかな在庫回転率を計算することもできる

競合他社の在庫回転率を把握したい場合は、以下の計算式でおおまかな目安値が算出できます。
在庫回転率=売上高÷棚卸資産 |
公開されている決算書(損益計算書や貸借対照表)の「売上高」と「棚卸資産」の数値を、上記の計算式に当てはめます。
ただし、前述の通り「売上高」と「棚卸資産」を使った計算はあくまで簡易的な方法であり、正確な値ではない点に注意が必要です。競合他社と比べてどれくらい差があるのかを把握できますが、あくまでも目安値として参考にしましょう。
在庫回転率を把握しておくメリット

在庫回転率を把握しておくメリットには、以下の4つが挙げられます。
- 在庫効率の改善によりコストを削減できる
- 顧客の需要を把握しやすくなる
- 在庫管理の精度が向上する
- キャッシュフローを適切に管理する
それぞれのメリットについて解説します。
在庫効率の改善によりコストを削減できる
在庫回転率を把握し在庫量を適正に維持することで、コストを削減できます。在庫回転率を把握しておけば滞留在庫を防止できるため、保管スペースや管理作業にかかる無駄なコストが発生せずに済むでしょう。
また、使用期限のある商品や劣化しやすい商品においては、過剰に在庫を抱えていると廃棄コストが発生するリスクがあります。このようなリスクを回避するためには、在庫管理を把握し、需要予測を的確に行うことが重要です。
顧客の需要を把握しやすくなる
在庫回転率を計算することで顧客の需要を把握しやすくなり、適切な在庫補充が可能となります。
在庫回転率が高い商品は、売れ行きがよく需要が高い商品であるため、在庫量を増やしておくことで機会損失を防げます。
また、季節商品やトレンド商品の需要変動も把握しやすくなり、販売時期やプロモーションのタイミングを最適化することが可能です。
さらに、複数の販売拠点がある場合、在庫回転率で地域ごとの需要特性が把握できます。
在庫管理の精度が向上する
在庫回転率を的確に把握することで在庫管理の精度が向上し、効率的な運営が可能になります。需要予測がしやすくなることで、売れ筋商品の追加発注や不良在庫の削減などの判断がしやすくなるためです。
たとえば、在庫回転率が急激に低下した商品を把握できれば、キャンペーンの実施や値下げなど、滞留在庫を減らす対策がタイムリーに行えます。
また、過去のデータと照らし合わせることで、販売戦略や仕入れ計画全体を最適化するための有力な情報となります。
キャッシュフローを適切に管理する
在庫回転率を把握することで、キャッシュフローを適切に管理し、資金繰りの悪化を防ぐことができます。在庫回転率が悪いということは、仕入や生産に必要なお金を先に支払い、売上の回収が遅れている状態です。
このような状態が長引くと、自由に使える資金が減り、運転資金が不足する原因となります。追加の資金調達が難しい場合、倒産につながることもあるでしょう。
在庫回転率を把握することは、単なる数字の管理ではなく、経営の基盤を支える重要な要素といえます。
在庫回転率を高めるためのポイント

在庫回転率を高めるために、以下5つのポイントを押さえておきましょう。
- 在庫管理システムを使用する
- リードタイムを短縮する
- 定期的に在庫回転率を確認する
- 不良在庫を減らす
- 定点発注を行う
それぞれの内容について解説します。
在庫管理システムを使用する
在庫回転率を高めるためには、在庫管理システムの使用が有効です。在庫管理システムを活用すると、商品の在庫量や販売動向などをリアルタイムで把握でき、適正在庫を維持しやすくなるため、在庫回転率の向上が期待できます。
また、在庫管理システムを使用すれば、売れ筋商品の特定や需要予測が容易になり、迅速で的確な意思決定が可能になります。その結果、過剰な在庫を抱えることなく、また、販売機会の損失も防げます。
リードタイムを短縮する
在庫回転率を高めるためには、リードタイム(商品の発注から納品までの期間)を短縮することが重要です。
とくに在庫がない場合には、リードタイムが短いと顧客に商品が届くまでの時間が短縮され、顧客満足度向上につながります。顧客満足度が上がりリピーターが増えれば、商品の売れ行きがよくなるため、在庫回転率が高まります。
リードタイムを短縮する主な方法は、以下のとおりです。
- サプライヤーとの連携を強化する
- 商品の調達先を増やす
- 在庫補充プロセスを見直す
- 生産スケジュールや工程を改善する
- 配送業者や物流手段を見直す
サプライチェーン全体を見直し迅速な供給体制を構築することで、在庫回転率の向上が期待できます。
定期的に在庫回転率を確認する
在庫回転率を高めるには、在庫回転率の確認を年1回の決算時だけでなく、月1回・週1回など短いスパンで定期的に行うことが大切です。
定期的に在庫回転率を確認することで、売れ行きの変化に早く気づきやすくなり、迅速な対応ができるためです。トレンドに応じて価格調整や値引きセールなどの対応を迅速に行えば、在庫回転率の低下を防げます。
月次や週次、場合によっては日次で在庫回転率を確認するルーティンを確立し、需要の変動に対し迅速に対応できるようにしておきましょう。
不良在庫を減らす
在庫回転率を高めるためには、不良在庫(売れ残りや需要がなくなった在庫)を早期に減らし、保管スペースや資金の無駄を削減することが重要です。
不良在庫を減らせば売れ行きのよい商品をより多く保管できるようになり、販売機会の損失を防げるため在庫回転率が向上します。
在庫回転率が低い商品を定期的にチェックし、値引きセールやキャンペーンの実施を検討、不良在庫を早期に処分しましょう。
とくにトレンド商品や季節商品は、販売ピークをすぎると売れ残りやすいため、迅速な対応が求められます。
定点発注を行う
定点発注も在庫回転率の向上に寄与します。定点発注とは、在庫量が一定の基準(発注点)を下回った時点で自動的に発注する手法です。
定点発注を行うことで、在庫量が過不足なく維持され商品の滞留を防げるため、在庫回転率の向上につながります。販売量の傾向や納品リードタイムを考慮し、発注点を設定します。
在庫回転率を高め経営を安定化しよう

在庫回転率を正確に把握することで過剰在庫や不良在庫を抑制できるため、保管コストや廃棄コストの削減が期待できます。
在庫回転率を向上させる方法には、在庫管理システムの活用や定点発注の実施などが挙げられます。在庫回転率を高めて経営の効率化と安定化を目指しましょう。
在庫回転率について課題を抱えている場合は、SBフレームワークスにご相談ください。
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