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リバースロジスティクス(静脈物流)とは?メリットや問題点、事例を紹介

ロジスティクス
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リバースロジスティクス(静脈物流)とは?メリットや問題点、事例を紹介

監修者プロフィール

玉橋丈児

SBフレームワークス マーケティング/広報

玉橋 丈児

物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。

リバースロジスティクスとは、商品の返品や回収に関わる物流を指しますが、近年では環境保護や資源の再利用を促進する仕組みとして重要さが増しています。

リバースロジスティクスの構築は、企業のブランドイメージアップや顧客満足度の向上などにもつながります。

本記事では、リバースロジスティクスを構築するメリットや問題点、取り組みの企業事例を解説します。

リバースロジスティクスに関する課題がある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社では「3PL・返品分析サービス」を提供しており、返品処理の効率化と返品データの活用により業務の改善をサポートします。返品率と返品理由を徹底分析し、商品説明の見直しや品質改善など、返品そのものを抑制する施策もご提案します。

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リバースロジスティクス(静脈物流)とは

リバースロジスティクスとは、商品が消費者から生産者や販売者へ戻る物流プロセスのことです。具体的には、以下のようなことがリバースロジスティクスに該当します。

  • クーリングオフや商品・サイズの違いなどによる返品
  • 使用済み商品の再利用・リサイクル
  • 故障品や不良品の回収
  • 賞味期限切れの商品の回収・廃棄処理
  • リコール・自主回収

近年、リユース・リサイクルの考え方が浸透し、環境保護が意識されていることから、リバースロジスティクスの重要性は高まっています。

リバースロジスティクスを構築するメリット

リバースロジスティクスを構築するメリットには、以下などが挙げられます。

  • 顧客ロイヤリティの向上
  • 環境保護に貢献し企業イメージを向上
  • コスト削減と利益の確保

それぞれのメリットについて解説します。

顧客ロイヤリティの向上

スムーズなリバースロジスティクスを構築することで、顧客の企業に対する信頼感が高まり、顧客ロイヤリティの向上につながります。迅速な返品・回収対応により顧客の不満が軽減されれば、「この企業は信頼できる」と感じる要因となるためです。

購入した製品に不具合や不満足な点が発生した際に、返品しやすい仕組みが整っていることで、購入時の心理的なハードルが下がり、次も利用したいという意欲が高まります。

環境保護に貢献し企業イメージ向上

リバースロジスティクスを適切に構築し、環境に配慮した取り組みを実施している企業と認知されることで、企業イメージの向上につながります。環境への配慮が求められる現代では、SDGs(持続可能な開発目標)への対応が、企業評価の重要な基準となっているためです。

リバースロジスティクスは、SDGsにおける目標「12.つくる責任、使う責任(※)」への具体的行動として有効です。取り組みを続けていくことで、社会的責任を果たす企業としてのイメージ向上が期待できます。

※参考:日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)「SDGs17の目標

コスト削減と利益の確保

効率的なリバースロジスティクスの仕組みを構築することで、資源の再利用が可能になると共に、長期的なコスト削減と利益の確保にもつながります。

具体的には以下の取り組みにより、コスト削減と利益確保が実現します。

取り組み内容期待できる効果
業務プロセスの効率化返品・返送手続きや伝票を統一化し、手続きを簡略化する人件費や事務コストを削減できる
部品や素材の再利用回収した商品の部品を再利用し、新たな原材料の調達を減らす
・原材料費を削減でき、製造コストの抑制につながる
・リユース事業で新たな収益を確保できる

返品商品の再販修理や再生を施した返品商品を「再生品」として販売する不良在庫を減らし、追加収益を確保できる
倉庫滞留期間の短縮返送商品を迅速に処理し、倉庫滞留期間を短縮する保管コストを削減できる
商品が売り手に戻ってくる際の配送手段・業者の一本化配送手段や契約業者を統一する返送コストを削減できる
返品傾向の分析返品傾向を分析し、返品原因を特定する不必要な返品を抑制することで、返品コストを削減できる

リバースロジスティクスの構築には初期コストやプロセスの再構築が必要ですが、長期的な利益を考えると投資価値の高い取り組みといえるでしょう。

リバースロジスティクスの問題点

リバースロジスティクスには多くの利点がある一方で、以下の問題点も存在します。

  • 返品の予測が難しい
  • モラルハザードのリスクがある

それぞれの問題点について解説します。

返品の予測が難しい

リバースロジスティクスの問題点の一つは、返品の予測が難しいことです。返品はトレンドの変化や季節性、キャンペーンの影響など、さまざまな要因によって大きく左右されるためです

返品がいつ・どのくらい発生するかの予測が困難なため、返品処理のリソース不足になるなど、計画的な管理がしにくいと言えます。

モラルハザードのリスクがある

モラルハザードのリスクがあるのも、リバースロジスティクスの問題点です。モラルハザードとは、損害の負担を自分以外の人や組織が引き受ける場合に、無責任な行動や不正な行動をとる可能性が高まることをいいます。

リバースロジスティクスにおいてモラルハザードのリスクがある理由は、柔軟な返品制度を導入し返品が容易にできるようになると、返品制度の仕組みが悪用される可能性があるためです。

起こり得るモラルハザードのリスクとしては、以下などが挙げられます。

  • 中古品とすり替えて返品する
  • 返品無料を悪用し、複数商品を試し買いして繰り返し返品する
  • 商品をわざと破損させ、不良品扱いとして返品する

モラルハザードを防ぐには、返品ポリシーを策定し悪用を防ぐ仕組みの構築が必要です。

一方で、アパレル商品のEC市場においては、返品を容易にすることで顧客満足度やロイヤリティの向上を目指す動きが広がっています。

商品を実際に手に取ることができないオンラインショッピングでは、返品しやすい環境を整えることが、顧客にとって安心して購入できる要素となるためです。

リバースロジスティクスを構築する流れ

リバースロジスティクスを構築する大まかな流れは、以下のとおりです。

流れ内容
1.返品受諾基準の明確化
・返品可能な期間を設定する
・返品可能な商品の状態(未使用、タグ付きなど)を明確にする
・受諾する返品理由を具体的に定義する
・クーリングオフの定義について理解する

2.購入時に返品基準を伝える・購入ページやFAQに返品ポリシーを記載する
・注文確認メールや同梱書類で返品条件をわかりやすく説明する
3.返品窓口の設置・CS(カスタマーサポート)部門に返品専用窓口を設ける
・返品受付の問い合わせ先を明示し、迅速に対応できる体制を整える
4.返送手段の定義・配送業者を指定する・返送用ラベルを事前に用意して顧客に提供する
・返品商品の店舗持ち込みに対応する
5.返金手段の定義・銀行振込、ポイント返還、カード返金など複数の返金方法を設定する
・返金対応のスピードを高める仕組みを構築する
6.返品された商品の在庫管理・返品された商品の状態を確認し、再販可能な場合は在庫に登録する
7.返品商品の処理・商品の状態をもとに処理方法を決定する(再生、修理、廃棄など)
・再生可能な商品は、清掃や修理を施して再販準備を行う
8.返品傾向の分析と抑制
・返品理由や傾向を定量化して分析する
・商品説明や画像の改善、返品が多い商品の品質向上を図る
・返品を減らすための施策を顧客に対して発信する

CS(カスタマーサポート)部門の責任範囲となる1〜5の処理はとくに重要です。顧客との間でトラブルが発生すると、CS部門に過度の負担がかかるだけでなく、後続の処理(返品商品の処理や在庫データの更新など)にも影響をおよぼします。

各ステップを整備し分析と改善を繰り返すことで、効率的なリバースロジスティクスを構築できます

リバースロジスティクス構築にあたっての課題

リバースロジスティクス構築にあたっては、以下の課題が伴います。

  • 構築にあたってコストがかかる
  • 顧客満足度と運営コストのバランスを踏まえた返品受諾基準が求められる
  • CS部門とのスムーズな連携体制を構築する必要がある
  • 効率的な返品プロセスを整備する必要がある
  • 返品商品の在庫管理をする必要がある
  • 廃棄、再生、中古販売などのプロセスを構築する必要がある

それぞれの課題について解説します。

構築にあたってコストがかかる

リバースロジスティクスの構築には、初期投資と継続的な運用コストがかかります。

返品対応を効率化するには、既存のシステムの改修が必要になるためです。たとえば、新品入荷と返品入荷の区別、システム上での良品への移動、返品商品と元の注文情報との照合を管理できるようにする必要があります。

また、リバースロジスティクスの構築には、通常のロジスティクスとは異なる専門知識が求められます。返品・回収対応を自社で対応できず外部に委託する場合は、委託料の予算確保が必要です

初期費用をどのように回収し、どのように継続的な運用を支えるかは事前に検討しておく必要があるでしょう。

顧客満足度と運営コストのバランスを踏まえた返品受諾基準が求められる

返品受諾基準をどのように設定するかも、リバースロジスティクス構築にあたっての課題です。返品基準が緩いと顧客の利便性は高まりますが、不必要な返品が増加する可能性があります。

一方で返品基準を厳しくするとコストは削減できますが、顧客にとっては不便となり満足度の低下につながります

顧客満足度と運営コストのバランスをよく検討した上で、返品受諾基準を決めましょう。

CS部門とのスムーズな連携体制を構築する必要がある

リバースロジスティクスの構築では、返品や返却など顧客と直接接点をもつCS(カスタマーサポート)部門との連携が欠かせません。

CS部門との連携が不十分だと、返品理由や商品の状態に関する情報が正しく共有されず、返品処理の遅延や誤配送が発生する可能性があります。また、返品手続きが滞ると顧客満足度が低下するだけでなく、物流や在庫管理にも影響します。

返品受諾基準や手続きのフローをマニュアル化し、CS部門とほかの部門の間で処理のばらつきが出ないようにすることが大切です。

効率的な返品プロセスを整備する必要がある

リバースロジスティクスを成功させるためには、効率的な返品プロセスの整備が不可欠です。返品プロセスの効率化は顧客満足度向上とコスト削減に直結します。

返品プロセスの構築では、以下のような課題が挙げられます。

プロセス課題対策
返品依頼の受付
・返品理由や状況を正確に把握するのが難しい
・対応の遅れが発生しやすい

・オンラインフォームやチャットボットを導入する
ユーザからの返送・配送コストの負担が不明瞭
・返送の遅延や不備が発生しやすい

・返送用ラベルを事前に提供する
・返送期限や手順を明確に提示する

返品商品の受領と確認・商品の特定に時間がかかる
・商品の状態確認に手間がかかる

・QRコードやバーコードで商品を追跡する
・自動検品システムやチェックリストを導入する

代替品の発送・発送のタイミングの判断が難しい・代替品の発送条件を明確にする

課題に応じた対策を講じることで、返品プロセスをスムーズに運用できます

返品商品の在庫管理をする必要がある

返品商品の在庫管理では、以下のような課題が挙げられます。

課題対策
返品商品の分類に時間がかかる
・分類基準を明確にする
・チェックリストを使用して「再販可能」「修理が必要」「廃棄対象」などに分類する

返品商品の保管スペースが不足する・返品専用の一時保管エリアを設ける
・商品をカテゴリごとに整理整頓し、迅速に判断する

大がかりなシステムに頼らずとも、シンプルなツールや運用の工夫で解決可能です。

廃棄・再生・中古販売などのプロセスを構築する必要がある

廃棄・再生・中古販売などのプロセス構築では、以下のような課題が挙げられます。

課題対策
廃棄基準が不明確で、判断に時間がかかる・廃棄基準を明確にしマニュアル化する
廃棄コストが増加する・リサイクル可能な部品や素材を分別し活用する
・廃棄業者と提携してコストを削減する
商品の再生作業が複雑になる場合がある・再生作業工程を明確にしマニュアル化する
・専門業者に委託する
中古商品の品質保証が難しい・中古商品の品質基準を定義する

適切な基準と運用方法を整備し、持続可能なリバースロジスティクスを目指しましょう。

​リバースロジスティクスの取り組み事例(COACHの事例)

COACHは「COACH(Re)Loved」プログラムを通じて、使用済みのコーチ製バッグを回収し、修理・リデザイン・再販する取り組みを実施しています

指定されたコーチストアで使用済みバッグを回収し、バッグのコンディションに応じた査定金額のクーポンを進呈しています。

回収されたバッグは熟練クラフトマンによる修理・クリーニング・リデザインを経て新商品として再販されます。

リバースロジスティクスの今後の展望

リバースロジスティクスは環境保護や資源の再利用、顧客サービスの向上などの観点から、今後さらに重要な役割を果たすと考えられます。持続可能性への関心が高まる中で、企業は単なる物流の効率化だけでなく、廃棄物削減や再利用を通じて社会的責任を果たすことが求められているためです。

また、テクノロジーの進化により、リバースロジスティクスにはAIやIoTなどの最新技術が積極的に取り入れられています。

返品処理や商品回収の各プロセスではさらなる自動化が進み、従来の手作業に比べて作業効率が飛躍的に向上していくでしょう。

リバースロジスティクスを構築し持続可能なビジネスを実現しよう

スムーズなリバースロジスティクスを構築することで、顧客満足度の向上やコスト削減などの成果を得ながら、環境保護や資源の再利用も実現できます。また、持続可能性が求められる現代において、リバースロジスティクスは企業の社会的責任を果たしつつ、ブランド価値を高める上でも欠かせない要素です。

リバースロジスティクスの構築や改善を進め、環境に配慮した経営と長期的な利益確保の両立を目指しましょう。

リバースロジスティクスに関するお悩みがある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。

弊社では、返品対応や商品の再販プロセスを効率化するための「もの・ことロジ」サービスを提供しています。「返品商品の処理が追いつかない」「返品理由の傾向を把握したい」などの課題に対し、最適な解決策をご提案いたします。

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玉橋丈児

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