モーダルシフトとは?求められる背景やメリット・デメリットを解説
監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
モーダルシフトとは、貨物輸送の一部をトラック(自動車)からを鉄道・船舶へ転換する取り組みです。近年、物流業界が直面するトラックドライバー不足やトラック輸送による環境負荷などの課題の解決策として注目されています。
本記事では、モーダルシフトが求められる背景やメリット・デメリットなどを解説します。
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目次
モーダルシフトとは

モーダルシフトとは、貨物輸送の一部をトラック(自動車)から鉄道・船舶へ切り替える取り組みです。特に、トラックの負担が大きい長距離区間を鉄道や船舶に置き換えることで、輸送の効率化と環境負荷の低減を図ります。
具体的には、倉庫や工場から中継拠点まではトラックで荷物を輸送し、その後の長距離区間は鉄道や船舶で輸送します。鉄道や船舶で別の中継拠点に運ばれた荷物は、再びトラックで納品先などの目的地へ輸送します。
このように長距離輸送を鉄道や船舶に置き換えることで、トラックによる輸送距離を減らせるため、CO2排出量の削減やドライバーの長時間労働の抑制が可能です。
持続可能な物流体制の構築に向けて、国土交通省はモーダルシフトを推進しており、物流業界が抱える課題を解決する手段として注目を集めています。
モーダルシフトが求められる背景

モーダルシフトが求められる背景として、以下の2つが挙げられます。
- 地球温暖化への対策
- 深刻化するトラックドライバー不足
それぞれの内容を解説します。
地球温暖化への対策
地球温暖化への対策として、輸送に伴うCO2排出量を抑えられるモーダルシフトが求められています。貨物輸送で大きな割合を占めるトラック(自動車)から、輸送量当たりの環境負荷が小さい鉄道・船舶へ一部を切り替えることで、排出量削減が期待できるからです。
国土交通省の資料によると、2023年度における日本のCO2排出量は9億8,900万トンです。そのうち、運輸部門のCO2排出量が最も多く1億9,014万トンであり、全体の約2割を占めています(※)。
また、運輸部門のCO2排出量の8割以上が、自動車による輸送です。そのため、トラック輸送に依存した体制のまま排出量を下げるには限界があり、長距離区間を中心に鉄道・船舶へ転換する考え方が重要になります。
※参考:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
深刻化するトラックドライバー不足
トラックドライバー不足が深刻化していることも、モーダルシフトが求められる背景です。人手不足により、従来のようにトラックだけで長距離輸送を回すことが難しくなり、必要なときに運べない(輸送力不足)リスクが高まります。
実際に、2020年以降はトラックドライバーの有効求人倍率は上昇傾向にあり、人材確保が難しい状況が続いています。

画像引用:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」
2024年度におけるトラックドライバーの有効求人倍率は、全職業平均と比較して2倍以上であり人材不足が顕著です。
このような状況の中、働き方改革関連法の施行により2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間に規制されました(※)。時間外労働の上限規制により、一人のドライバーが担える運行距離・運行時間が短くなった結果、従来どおりの長距離輸送を維持するには、より多くのドライバーや車両手配が必要になります。
しかし、慢性的なドライバー不足が続いており、トラックのみに頼った輸送体制を維持することは困難です。そのため、長距離区間の輸送を鉄道や船舶に任せる分業体制の構築が求められています。
※参考:国土交通省「トラック運転者の改善基準告示」
企業がモーダルシフトを推進するメリット

企業がモーダルシフトを推進するメリットは、以下のとおりです。
- 人手不足の緩和につながる
- CSRの一環として環境負荷を低減できる(ESGにも寄与)
それぞれの内容を解説します。
人手不足の緩和につながる
モーダルシフトを推進することで、トラックドライバー不足の緩和につながります。長距離区間の輸送を鉄道や船舶に任せることで、トラック輸送に必要な走行距離や運行時間を減らせるからです。
その結果、長距離輸送を担当していたドライバーを近距離区間の配送に振り分けられるため、同じ荷物量でも限られたドライバーで輸配送を維持しやすくなります。
CSRの一環として環境負荷を低減できる(ESGにも寄与)
企業の社会的責任を果たせるのも、モーダルシフトを推進するメリットです。
近年、企業には利益追求だけでなく環境や社会、ガバナンスに配慮したESG経営が求められています。トラックでの輸送を鉄道や船舶による輸送に転換することで、輸送時のCO2排出量削減に貢献でき、企業として環境負荷の低減に取り組む姿勢を示しやすくなります。
モーダルシフトによる環境配慮の取り組みは、取引先や投資家などのステークホルダーからの評価につながり、企業の信頼性向上を後押しする要素になるといえるでしょう。
モーダルシフトの課題・デメリット

モーダルシフトの課題・デメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 天候や災害の影響を受けやすい
- 運行ルート・ダイヤ都合でスケジュール調整が難しい
- 荷物が少ないと輸送費用が割高になる
それぞれの内容について解説します。
天候や災害の影響を受けやすい
モーダルシフトのデメリットの一つは、トラック輸送に比べて、鉄道や船舶が自然災害や悪天候の影響を受けやすい点です。
台風の接近によるフェリーの欠航や、土砂崩れ、地震などによる線路設備の被害が起きると、復旧まで輸送が停止する可能性があります。鉄道・船舶は運行ルート自体が止まると代替が利きにくく、影響が長引くこともあるでしょう。
一方、トラック輸送は道路の迂回などで対応できるケースもあります。そのため導入時は、代替輸送(臨時のトラック手配など)や在庫配置を含めたBCP(事業継続計画)を事前に整備しておくと安心です。
運行ルート・ダイヤ都合でスケジュール調整が難しい
鉄道・船舶輸送は、トラック輸送に比べてルート・スケジュールの自由度が下がります。あらかじめ定められた運行ルートや発着時刻にもとづいて行われるため、配送先の要望に応じて対応できない可能性があるからです。
たとえば、急な出荷が発生した場合、集荷の締切に間に合わず、次の便まで待つことで納品リードタイムが延びることがあります。モーダルシフトを前提にする場合は、出荷締切・積替え時間も含めて、リードタイムに余裕をもった運用設計が必要です。
荷物が少ないと輸送費用が割高になる
荷物量が少ない場合、モーダルシフトはトラック輸送よりも輸送費用が割高になることがあります。鉄道や船舶による輸送は、コンテナ単位で運賃が設定されており、一定量の荷物をまとめて運ぶことを前提としているからです。
たとえば、トラック1台分にも満たない少量の荷物を輸送する場合でも、コンテナ1基分の運賃がかかります。さらに、駅や港までの集荷費用や、到着した駅や港から納品先までの配送費用も発生します。
荷物量が少ない場合には他社との共同配送も視野に入れたうえで、モーダルシフトの導入可否を検討するとよいでしょう。
モーダルシフトを実現した企業事例

モーダルシフトを実現した企業の事例を3つ紹介します。モーダルシフトの取り組みを検討する際の参考にしてください。
関西〜関東間の輸送を鉄道輸送に転換|大王製紙株式会社・サントリーホールディングス株式会社
製紙メーカーの大王製紙株式会社と飲料メーカーのサントリーホールディングス株式会社は、共同でモーダルシフトに取り組んでいます。
具体的には、関西と関東を往復するトラック輸送を鉄道輸送に転換し、片道600kmのモーダルシフトを実現しました。また、転換拠点に荷物を輸送したトラックに、鉄道輸送で運ばれてきた荷物を積載することで、輸送効率を向上させています。
これらの取り組みによりCO2排出量を約100トン、ドライバーの運転時間を約1,800時間削減できると試算されています。
参考:国土交通省「モーダルシフトに関する事例」
トラックによる長距離輸送をJRコンテナ貨物輸送に転換|大和ハウス工業株式会社
住宅メーカーの大和ハウス工業株式会社は、工場から住宅建設現場に製造品を輸送する際にモーダルシフトを行っています。
同社では、工場ごとに特定の製品を専業で生産して建築現場までトラックで輸送する体制をとっていたため、製造後の輸送距離が長くなり物流費が増加していました。また、荷物量が多くトラックの手配やドライバーの確保が困難である点も課題でした。
これらの課題を解決するために、500km以上の長距離輸送の一部をトラック輸送からJRコンテナ貨物輸送に転換しています。その結果、秋田方面では転換拠点を倉庫代わりに活用できるようになり、外部倉庫の運用費削減を実現しました。また、輸送時におけるCO2排出量の削減にも貢献しています。
トラック輸送から鉄道輸送に切り替えてCO2排出量を削減|本田技研工業株式会社
自動車メーカーの本田技研工業株式会社は、EV(電気自動車)の部品の輸送にモーダルシフトを取り入れる実証実験を行っています。
以前までは、EVの部品であるバッテリーパックをサプライヤーの生産工場から同社に輸送する際の物流網がなく、新たに物流体制を構築する必要がありました。また、環境に優しいEVの部品であるからこそ、その製品価値を輸送段階で損なわないよう、輸送時におけるCO2排出量の削減も考慮しなくてはなりませんでした。
これらの課題を解決するために、従来のトラック輸送ではなく環境負荷の少ない鉄道輸送に転換しています。モーダルシフトを取り入れたことで、トラック輸送と比較して74.5%のCO2排出量削減に成功しています。
モーダルシフトを推進して物流の課題解決につなげよう

モーダルシフトは、長距離(幹線)区間の輸送を鉄道・船舶に切り替えることで、トラックの走行距離や運行時間を抑えられる取り組みです。
モーダルシフトにより、限られたドライバーで輸送力を維持しやすくなり、ドライバー不足の緩和に寄与します。あわせて、トラック輸送比でCO2排出量の削減が期待できるため、環境負荷低減の観点でも有効です。
ただし、モーダルシフトにはダイヤ・航路による制約やリードタイム、荷量による費用などの条件があります。自社に適した形で導入するには、どの区間を切り替えるか、どの荷物が適しているか、代替手段をどう設計するかを整理したうえで、輸送計画を組み立てることが重要です。
自社の輸配送業務で「安定した輸送力を確保したい」「長距離輸送の負担を見直したい」などの課題がある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。安全性に優れたGマーク認定事業者として、持続可能な物流体制の構築をサポートいたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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