物流業界が直面している課題とは?企業が検討すべき対策や今後の展望を解説
監修者プロフィール
SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
現在、物流業界はドライバー不足や物流コストの増加など、多くの課題に直面しています。物流を停滞させないために、産業界全体では課題の解決策を考えなくてはなりません。
しかし、課題を解決するために、具体的にどのような取り組みをすればよいか悩んでいる企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、物流業界が直面している課題や国土交通省が推進している解決策、企業が検討すべき対応策を詳しく解説します。
自社の物流業務に課題がある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社では独自の輸送網による安定した輸送力を確保しており、企業の状況に応じた解決策のご提案が可能です。
目次
物流業界の現状
ネット通販の普及などにより物流業の市場規模は拡大しています。国土交通省の3日間調査によると、1990年度から2021年度の約20年で、物流件数は以下のようにほぼ2倍になっています。
画像引用:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
また、宅配便取扱実績も増加傾向です。2022年度の宅配便取扱箱数は約50億個と、5年間で23.1%増加しています。
物流件数は増加していますが、ネット通販市場の拡大に伴って、物流の小口多頻度化が進んでいるのが現状です。その一方で、ドライバー数は年々減少しており、半数以上の企業がドライバー不足を感じています。
参考:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
物流業界が直面している課題
現在、物流業界は以下のような課題に直面しています。
- ドライバー不足
- 物流の小口化
- 長時間の荷待ち・荷役作業
- 物流コストの増加
- CO2排出量の削減
- 物流の2024年問題への対応
それぞれの課題について解説します。
参考:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
ドライバー不足
宅配個数の増加や小口配送の多頻度化などにより、多くのドライバーが必要となっています。しかし、ドライバー数は年々減少傾向です。
国土交通省の資料によると、1995年から2015年までの20年間で運送業のドライバーは、21.3万人減少しています。さらに、2015年から2030年までの15年間で、24.8万人減少すると予測されています。
画像引用:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
その他に、ドライバーの平均年齢の上昇、および若年層の担い手減少も懸念される点です。2016年時点における中小型トラックドライバーの平均年齢は45.4歳、大型トラックドライバーの平均年齢は47.5歳です(※)。全職業の平均年齢42.2歳と比べて、3〜5歳高い傾向にあります。
また、道路貨物運送業における29歳以下の割合は9.1%であり、同年齢構成比の全産業の平均16.3%と比べて低い状況です(※)。そのため、トラック運送業では、若年層の雇用を促進し、ドライバーの担い手を確保する必要があります。
※参考:国土交通省「トラック運送業の現況について」
物流の小口化
ネットショッピングやフリマアプリなどのECサービスの普及により、小口配送が増加したことで、配送効率が低下しています。小口配送は一つの配送先に対して少量の荷物を配送するため、トラック1台に載せる荷物量が減り、積載率低下につながります。
2010年以降、貨物自動車への積載率は40%以下で推移しており、トラックに積める荷物量の半分以下で配送している状況です。一方で、小口配送が増加していることから、配達回数が増えドライバーに負担がかかっています。
長時間の荷待ち・荷役作業
荷主や物流施設の都合により、長時間の荷待ち・荷役作業が発生している点も物流業界の課題です。
国土交通省の調査によると、1運行あたりの荷待ち時間(物流拠点での待機時間)は平均1時間45分であり、全体の約3割が2時間を超えています。
画像引用:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
荷積み、荷降ろしにかかる時間は、1.5時間以内が約7割を占めています。荷積みや荷降ろしなどを合わせた荷役作業時間は合計3時間以上かかっていると予想され、長時間の荷待ち・荷役作業の改善は急務といえます。
物流コストの増加
近年、燃料費が高騰している影響で、物流コストが増加傾向にあります。加えて、自動車のタイヤやバッテリーなど、自動車部品関連の費用も上昇しており、物流コストの増加に拍車をかけています。
また、再配達も物流コスト増加の原因の一つです。再配達は無料のサービスであるため、燃料費や人件費などのコストだけが余計にかかってしまいます。
その他に、ドライバーの担い手不足解消のためにドライバーの賃金を上げざるを得なくなると、物流コストがさらに増える可能性があります。
CO2排出量の削減
近年、地球温暖化対策として、温室効果ガスであるCO2の排出量削減が国際的に重要視されています。
国土交通省の調査によると、2022年度の運輸部門のCO2排出量は、日本のCO2排出量全体(10億3,700万トン)のうち18.5%を占めています(※)。
日本は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目標としており、運輸部門でもCO2排出量の削減に努めなくてはなりません。
※参考:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
物流の2024年問題への対応
働き方改革関連法の変更に伴い、2024年4月からドライバーの時間外労働が年960時間(休日労働含まず)までに制限されました。
時間外労働の上限規制により、これまで一人のドライバーで配送していた荷物を複数のドライバーで分担して運ぶことになり、長距離輸送のドライバーが不足する恐れがあります。ドライバー不足により物流が滞ると、サプライチェーンが脆弱になってしまいます。
対策を何もしないと、2030年度には輸送能力が約34%不足する可能性があると示唆されています。そのため、2024年問題への対応策を考えなくてはなりません。
国土交通省が推進している物流課題の解決策
国土交通省は物流課題の解決策として、以下4つの取り組みを推進しています。
- 輸送網を集約する
- モーダルシフトを導入する
- 輸配送を共同化する
- トラック・物流Gメンの活動によって業界の労働環境の改善を図る
それぞれの取り組みの内容について解説します。
輸送網を集約する
物流企業の輸送網を集約すると、物流の効率化が図れます。
現状の物流業界では、それぞれの物流企業の倉庫や荷捌き場が日本各地に分散されている状態です。輸送の際に経由地が複数あるため、物流の効率が悪くなっています。
それぞれの物流企業が連携し、倉庫や荷捌き場を一つの施設に集約することで、輸送の経由地が減ります。その結果、輸送距離が短くなり輸送コストやCO2排出量の削減が可能です。
参考:国土交通省「物流総合効率化法に基づく支援」
モーダルシフトを導入する
モーダルシフトの導入により、ドライバー不足の解消や輸送の効率化につながります。モーダルシフトとは、トラックによる輸送を鉄道や船舶での輸送に切り替えることです。
鉄道や船舶は、トラックよりも一度に多くの荷物を運べるため、輸送の効率化ができます。また、同じ荷物量をトラックで輸送する場合に比べて、CO2の排出量を抑えられるため、環境対策にもなります。
参考:国土交通省「物流総合効率化法に基づく支援」
輸配送を共同化する
複数の物流企業が連携して共同配送を行えば、物流コストの削減が期待できます。
通常、請け負った荷物は、各物流企業が自社のトラックで独自のルートで配送をします。そのため、状況によっては積載量が少ない状態で配送せざるを得なくなることも少なくありません。結果的に、燃料費や人件費のコストが無駄にかかってしまいます。加えて、ドライバーの負担が大きくなってしまうのも懸念点です。
共同配送により1台のトラックに荷物をまとめて配送すれば、積載率が向上し稼働するトラックの台数を減らせるため、燃料費や人件費を抑えられます。
また、CO2排出量を削減できる点も、輸配送を共同化するメリットです。
参考:国土交通省「物流総合効率化法に基づく支援」
トラック・物流Gメンの活動によって業界の労働環境の改善を図る
トラックドライバーの労働環境を改善する目的で、トラック・物流Gメンが活動しています。トラック・物流Gメンとは、荷主企業や元請事業者が不当な要求や違反行為を行っていないかを監視する国土交通省の組織です。
元々「トラックGメン」として活動していましたが、2024年11月1日より「トラック・物流Gメン」に改組し、情報収集の対象がトラック事業者だけでなく倉庫業者も含まれるようになりました。
荷主企業や元請事業者が物流会社に求める依頼内容を見直し、物流業界全体の環境が良くなれば、ドライバーの定着率向上が期待できます。
参考:
国土交通省「「トラックGメン」について」
国土交通省「トラックGメンを「トラック・物流Gメン」へ改組・拡充し、集中監視月間を実施します」
物流業界が検討すべき課題への対策
物流業界が直面している課題を解決するには、以下のような対策を検討する必要があります。
- 物流業務プロセスを見直す
- 物流管理システムや自動化設備の導入によって倉庫内業務の効率化を図る
- サプライチェーン・マネジメントの考え方を導入する
- 物流拠点を強化する
- ドライバーの労働環境を改善する
それぞれの対策について解説します。
物流業務プロセスを見直す
非効率な工程や無駄な作業がないかなど、物流業務のプロセスを見直す必要があります。たとえば、荷物量や配送先によって配送頻度・ルートを最適化すると物流コストの削減につながります。
また、再配達や即日配達、納品時の付帯作業が過剰サービスになっていないかを見直すと、ドライバーの負担が軽減できるでしょう。
自社での対応が難しい場合は、物流代行業者に委託するのも一つの選択肢です。商品の管理から配送まで、物流業務を一括して代行する業者もあり、サービス品質を落とさずに物流の効率化を図れます。
物流管理システムや自動化設備の導入によって倉庫内業務の効率化を図る
業務負担の軽減や効率化のために、物流管理システムや自動化設備の導入を検討するとよいでしょう。倉庫管理システムや自動倉庫システムなどの導入により、アナログ業務に起因する人的ミスや非効率な作業を削減できます。
また、輸配送管理システムを使用し輸送ルートの最適化を行えば、輸送コストの削減が可能です。
他にも、倉庫での荷降ろしや搬送を自動化できるロボットを導入すれば、高い棚への荷物の収納や、重い荷物の運搬などの業務をロボットに任せられるため、従業員の作業負担が軽減します。
物流管理システムや自動化設備の導入により作業効率が向上すれば、人手不足も解消されるでしょう。
サプライチェーン・マネジメントの考え方を導入する
サプライチェーン・マネジメントの考え方を導入し、サプライチェーンにおける「物・お金・情報」の一連の流れを企業間で共有するのも有効です。商品の在庫や販売状況をリアルタイムで把握でき、正確な需要予測や在庫管理が可能になるからです。
また、需要予測や在庫状況をもとに、原材料や商品の輸配送ルートを組み立てられます。そのため、サプライチェーンにおける無駄がなくなり、物流コストを削減できます。
サプライチェーン・マネジメントについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
物流拠点を強化する
首都圏や東海圏に物流拠点を作ると、高速道路の利便性が高いため、配送しやすい物流ルートができます。また、人口や企業の多い首都圏や関西に物流拠点があると、効率的に配送しやすいでしょう。
さらに、他の企業と共同で使える物流拠点を設けると輸送網を集約でき、物流業界全体の効率化にもつながります。
ドライバーの労働環境を改善する
ドライバー不足を改善するために、労働時間や給与を見直して、働きやすい環境にしましょう。厚生労働省のデータによると、2021年のトラックドライバーの年間所得額は446万で、全産業の年間所得額489万円と比べると約40万円低い金額です。
また、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業と比べて約2割長く、労働時間に見合った給与に見直す必要があるといえるでしょう。さらに、有給休暇や産休・育休を取得しやすい環境にすることも大切です。
加えて、働き方改革関連法の変更により年間の時間外労働に上限規制が設けられたため、ドライバーを増やさないと物流が滞る可能性があります。労働環境を改善しドライバーの離職防止、および新たにドライバーを確保する必要があります。
参考:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
物流業界におけるドライバー職は将来なくなる?
ドローンや自動運転の普及により、ドライバー職は将来なくなるとの声もあります。しかし実際のところ、ドライバー職がすぐになくなることはないでしょう。
仮に将来、自動運転に置き換わるとしたら、まずは長距離輸送からであると考えられます。自動運転は人間のドライバーと比べて運転ミスが少なく、24時間走行可能だからです。
一方、宅配などの近距離配送がすべて自動化されるのは、まだ時間を要すると考えられています。
仮にドライバーの需要が減っても、ドローンや自動運転などの新たな技術を管理・運営する職種の需要が高まると予想されます。
物流業界の今後の展望
物流の課題解決のために、2040年を目標としてフィジカルインターネット実現の展望があります。フィジカルインターネットとは、デジタル技術を活用して保管・輸送機能などを誰でも利用できるようにする物流プラットフォーム構想です。
複数の企業の倉庫やトラックを共有できるため、効率的な輸送方法を選択して荷物を運べます。
フィジカルインターネットの目的は、倉庫やトラックなどの空き状況の見える化や、規格化された容器での貨物の管理などにより、物流の効率を高めることです。
物流の効率化により、輸送距離や輸送にかかる時間が削減されるため、ドライバー不足やCO2排出量の削減などの課題解決につながります。
フィジカルインターネットについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
参考:経済産業省「フィジカルインターネットの実現に向けた取組について」
企業の物流課題を解決した弊社事例
弊社の物流サービスを導入して、物流課題を解決したお客様の事例を2つ紹介します。
倉庫を集約して運用を効率化|株式会社OSM International様
株式会社OSM International様は、スポーツビジネスの総合商社として、代理店事業とスポーツライセンス事業を中心としたビジネスを展開している企業です。
BtoC物流と、卸・実店舗向けのBtoB物流の両方を扱っているため、倉庫での在庫の分散や運用の二重化により、コストやリードタイムが増加している課題を抱えていました。
この課題を解決するために、BtoCとBtoBの倉庫を1ヵ所に集約して、保管費用の最適化と効率的な運用を実現しています。
参考:SBフレームワークス株式会社「BtoCもBtoBも。倉庫をまとめて一元管理ができました」
輸送品質の向上と事務作業の負担軽減を実現|株式会社リンクスインターナショナル様
株式会社リンクスインターナショナル様は、PCパーツやパソコン関連製品の代理店事業を展開している企業です。
精密機器である商品が輸送過程で破損したり、到着が遅延したりするなど、輸送品質に課題を抱えていました。
これらの課題を解決するために弊社の輸配送サービスを活用し、取引先への定期的な納品には混載便を、繁忙期にはチャーター便を利用する最適な輸送方法に変更しました。
輸送方法の最適化により、商品の破損や納期遅延が大幅に減少し、輸送品質の向上と事務作業の負担軽減を実現しています。
参考:SBフレームワークス株式会社「輸送品質を大きく向上させることができました」
外部委託や物流管理システムを活用して物流課題を解決しよう
物流業界は、小口配送の多頻度化による積載率の低下や2024年問題への対応など、さまざまな課題に直面しています。課題を解決するためには、物流管理システムを活用して効率化を図ったり、物流業務のプロセスを見直したりする必要があります。
自社での対応が難しい場合は、物流代行業者に委託することで業務負担の軽減や輸送の最適化が可能です。外部委託や物流管理システムを活用して、自社の物流の課題を解決しましょう。
物流の課題解決に悩んでいる場合は、SBフレームワークスにご相談ください。お客様のお悩みに対して最適な在庫管理・輸配送プランを設計いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
監修者プロフィール
SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
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