EVトラックとは?導入するメリットや課題を解説

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
EVトラックとは、電力でモーターを駆動して走行する商用トラックです。EVトラックは環境負荷が少なく、CO2排出量の削減に大きく貢献します。しかし、1回の充電で走行できる距離や充電設備などの課題も多く、EVトラックを導入するか判断しかねている企業担当者の方もいるでしょう。
本記事では、EVトラックを導入するメリットや普及を妨げる課題について解説します。
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目次
EVトラックとは

EV(Electric Vehicle)トラックとは、ガソリンやディーゼルではなく電気をエネルギー源としてモーターで走行する商用トラックです。近年、CO2排出削減や燃料費高騰への対策として物流業界ではEV化の動きが進んでおり、政府も商用EVトラックの導入を推進しています。
EVトラックは、電力の供給方法や構造の違いによって、以下の種類に分類されます。
| 種類 | 概要 | 特徴 |
| バッテリー式電動トラック (BEV) | バッテリーに充電した電力でモーターを駆動して走行するトラック | ・現在最も普及が進む駆動方式 ・短〜中距離の配送業務に適する |
| 燃料電池式電動トラック (FCV/FCEV) | 水素と酸素の化学反応によって電気を発生させ、その電力でモーターを駆動し、走行するトラック | ・電気の充電に比べて、水素の充填時間が短い ・他のEVトラックに比べて長時間稼働できる |
| プラグインハイブリッド式電動トラック (PHEV) | 通常は電力で走行し、長距離ではエンジンを併用して走行するトラック | ・充電環境がなくても運行可能 ・電動走行は短距離にとどまる |
| レンジエクステンダー型電動トラック (EREV) | 通常は電力で走行し、バッテリーが減るとエンジンで発電して走行を続けるトラック | ・常にモーターで走行し、エンジンは発電用に用いられる ・中距離輸送や地方の広域輸送に適する |
一般的にEVトラックと表現される場合は、バッテリー式電動トラック(BEV)を指します。日本国内では、政府の補助金制度やカーボンニュートラル政策を背景に、商用BEVトラックの普及が本格化しつつあります。
参考:環境省「商用車等の電動化促進事業」
EVトラック普及の現状

現在、日本国内でのEVトラックの普及率はまだ低い水準にとどまっています。航続距離(1回の充電で走行できる距離)の制約や充電設備の不足などの課題が残っているからです。
2023年3月時点、8t以下の貨物トラック約43.5万台のうちEVトラックは12,651台で、保有率はわずか2.9%にすぎません(※1)。
政府は、2030年度までに8t以下の商用トラック全体のうち、電動車(BEV・PHEV・FCVなど)の割合を5%に引き上げる目標を掲げています(※2)。補助金制度やインフラ整備、メーカー各社の新型EVトラック投入が進んでおり、今後の市場拡大に向けた動きは加速しつつあります。
しかし、長距離輸送への対応や電力の確保など技術的な課題があるため、普及の拡大には至っていないのが実情です。
※1 参考:公益社団法人全日本トラック協会「都道府県別 電動車保有割合(令和6年3月末時点)」
※2 参考:経済産業省「改正省エネ法を踏まえた荷主制度の対応」
EVトラックの普及を妨げる課題

EVトラックの普及を妨げている課題として、以下が挙げられます。
- 長距離輸送が難しい
- 充電に時間がかかる
- 積載量が少なくなる
- 充電インフラが不足している
- 初期投資がかかる
それぞれの内容について解説します。
長距離輸送が難しい
現在のEVトラックは、長距離輸送には不向きとされています。バッテリー容量や車両重量の制約により、1回の充電で走行できる航続距離が限られるからです。
エンジン式トラックの航続距離が700〜1,600kmであるのに対し、EVトラックは100〜300kmで、ディーゼルトラックの1/5程度にとどまります(※)。また、積載量の増加や冷暖房の使用により電力が消費されれば、実際の走行距離はさらに短くなるでしょう。
近年は大容量バッテリーを搭載したモデルや燃料電池(FCV)トラックの開発が進み、長距離対応への技術革新が期待されています。しかし、現時点で長距離輸送を担う主力車両としては課題が多い状況であるため、導入の際は運行計画や充電スケジュールを工夫する必要があります。
※参考:環境省「国土交通省主催「第2回大型車の長期的な低炭素化に向けた勉強会」環境省資料」
充電に時間がかかる
EVトラックは、充電に時間がかかる点が大きな課題です。普通充電(AC充電)の場合、100km走行分の電力を充電するには約8時間が必要で、運行の柔軟性が制限されるからです(※)。
急速充電(DC充電)を利用すれば1〜2時間程度で充電できる場合もありますが、商用トラックが利用できる急速充電設備は依然として限られています。そのため、突発的な配送スケジュール変更や長距離運行が必要な場合は、充電完了までの待機時間を考慮に入れなければなりません。
ただし、夜間の稼働時間外に普通充電を行う運用方法や、途中の休憩時間を活用した充電計画など、企業側の運用工夫によって対応可能なケースもあります。
充電に要する時間が業務効率に影響することから、今後は急速充電器の普及や充電インフラ整備の進展が鍵になるでしょう。
※参考:環境省「国土交通省主催「第2回大型車の長期的な低炭素化に向けた勉強会」環境省資料」
積載量が少なくなる
EVトラックは、従来のディーゼルトラックに比べて積載量が少なくなる傾向にあります。同じ総重量枠(車両本体+荷物+乗員)でも、EVトラックは大容量バッテリーが車両本体の重量を占める比率が高く、荷物を積める重量が相対的に減少するからです。
積載量が減ると1回の輸送で運べる荷物が限られるため、配送回数や車両台数を増やす必要が生じることもあるでしょう。ただし、短距離配送や定期便などの運行距離が短い業務では積載量の影響を受けにくく、EVトラックを運用しやすい場合もあります。
現在、軽量バッテリー技術や車体構造の改良が進められているため、将来的には積載量への影響は軽減されていくでしょう。
充電インフラが不足している
EVトラックの普及を妨げる大きな要因の一つが、商用EVトラック向けの充電インフラの不足です。現在設置されている充電スタンドの多くは普通乗用車向けであり、大型・商用トラックが利用できる充電設備は限られています。
とくに、以下の点が商用車対応のハードルとなっています。
- 車両サイズに対応した駐車スペースの確保がしづらい
- 急速充電器の高出力化に伴い、電力インフラへの負荷が増大する
政府は2030年までに、商用車対応の充電インフラを全国に15万基設置する目標を掲げており、有料道路SA・PAや物流拠点周辺での整備が進められています(※)。
一方で、現段階では公共インフラだけで十分に運用するのは難しいため、企業が自社拠点に普通充電器や急速充電器を整備するケースも増えています。
※参考:環境省「充電インフラ整備促進に向けた指針」
初期投資がかかる
EVトラックを導入する際の課題は、初期投資が大きくなりやすいことです。初期投資が大きくなりやすい理由は、車両本体の価格と充電設備の整備費用が必要になるからです。
現在のEVトラックはバッテリーの費用が高額なため、同等クラスのディーゼルトラックに比べておよそ2〜3倍程度の価格差があります。さらに、自社拠点に普通充電器や急速充電器を設置する場合、1基あたり数十万円〜数百万円の費用が発生します。
なお、初期投資の課題に対しては、政府や自治体が設けている補助金制度やインフラ整備支援制度を活用することで費用負担の軽減が可能です。
※参考:一般社団法人大阪府トラック協会「カーボンニュートラル検討会レポート」
EVトラックを導入するメリット

EVトラックを導入するメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- CO2排出量を削減できる
- 運用費の削減につながる
- 騒音トラブルのリスクを低減できる
それぞれの内容について解説します。
CO2排出量を削減できる
EVトラックを導入することで、CO2排出量を削減できます。EVトラックは走行時にCO2を排出しないからです。
環境省のデータによると、2023年度における日本全体のCO2排出量のうち、運輸部門は約19%(約1億9,000万トン)を占めています。物流業界におけるCO2排出量の削減は、喫緊の課題です。

画像引用:環境省「2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)」
ガソリン車やディーゼルトラックからEVトラックへ切り替えることで、企業はカーボンニュートラル経営への取り組みを具体的に示せます。また、環境への取り組みを強化することで、取引先や消費者からの信頼向上やESG評価の改善にもつながります。
運用費の削減につながる
EVトラックを導入することで、メンテナンス費の削減による運用費の低減が期待できます。EVトラックは、エンジンや変速機などの複雑な部品が少ないからです。オイル交換やエンジン整備の必要がないため、部品交換の費用や故障リスクを軽減できます。
騒音トラブルのリスクを低減できる
EVトラックを導入することで住宅地周辺での配送、夜間や早朝の運行でも近隣住民への騒音トラブルを大幅に軽減できます。EVトラックは、モーター駆動によるエンジン音や排気音が発生せず、走行が非常に静かであるからです。
そのため、静音性の高いEVトラックを選択することで、地域社会との良好な関係の構築や企業イメージの向上につながります。
弊社におけるEVトラックの導入事例

ソフトバンクグループの物流事業を担う弊社は、脱炭素経営の推進と環境負荷の低減を目的に、2023年12月よりEVトラックを導入しました。導入した車両は、三菱ふそうトラック・バス製「e Canter」で、最大積載量3t、航続距離約100kmのモデルです。
都内から神奈川方面の定期配送、および都内中心部を運行ルートとして配送業務に使用しており、1日あたり約60〜70kmを走行しています。
弊社はこの取り組みを通じて、持続可能な物流体制の確立と脱炭素社会への貢献を目指しています。
参考:SBフレームワークス株式会社「EVトラックを導入 脱炭素施策の推進を加速」
EVトラックを導入し持続可能な物流を目指そう

EVトラックを導入することで、走行時のCO2排出量の削減や騒音の低減につながり、環境面・社会面の両方でメリットがあります。
一方で、1回の輸送で対応できる距離の制限や、導入時の初期投資の負担などの課題もあります。EVトラックを導入する際は、費用対効果や充電インフラの整備状況などを踏まえて、慎重に判断することが重要です。
自社の物流体制に適した形でEVトラックを活用し、持続可能な輸配送の構築を目指しましょう。
輸配送に関して課題がある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。エコドライブの実績を多数獲得しており、環境に配慮したいお客様のご要望に応えられる体制を整えております。まずはお気軽にお問い合わせください。
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玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
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充電設備がショッピングモールの立体駐車場内などに設置されている場合、車両全高や全長などが大きいトラックタイプの車両は、これらの設備に物理的にアクセスすることができません。現状では、自社の車庫、一部のカーディーラー、有料道路上のSA・PA等の充電設備を利用するのが一般的です。