ホワイト物流とは?取り組むメリット・デメリットや企業事例を紹介

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
物流業界では、トラックドライバーの不足や、2024年4月から始まった時間外労働時間の規制による輸送能力低下などの課題を抱えています。これらの課題を解消し持続可能な物流体制を構築するために、政府はホワイト物流の取り組みを推進しています。
ホワイト物流という言葉を見聞きしたことはあるものの、具体的にどのようなものなのかは理解していない、何をすればよいのかわからないという企業担当者の方もいるでしょう。
本記事では、ホワイト物流に取り組むメリットや企業事例を紹介します。
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目次
ホワイト物流とは

ホワイト物流とは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が中心となって推進している、物流業界全体の働き方改革を目的とした取り組みです(※)。トラックドライバーの長時間労働や人手不足を解消し、持続可能な物流体制を構築することを目指しています。
ホワイト物流が注目される背景には、ドライバーの減少や高齢化、物流の2024年問題による輸送力不足などがあります。このような課題を解決するためには、企業とドライバー双方の負担を軽減し、持続可能な物流の仕組みを構築していくことが重要です。
※参考:国土交通省「物流を取り巻く現状と課題」
「ホワイト物流」推進運動とは?国土交通省が進める取り組み内容と参加方法

「ホワイト物流」推進運動とは、深刻化するトラックドライバー不足を解消し、持続可能な物流体制を構築することを目的とした国の推進プロジェクトです。2019年4月から国土交通省・経済産業省・農林水産省が連携して展開しており、2025年時点で3,300社以上が賛同しています。
「ホワイト物流」推進運動の目的は、以下の2点です(※)。
| ・トラック輸送の生産性向上と物流効率化 ・多様な人材(女性・シニア)も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現 |
企業がホワイト物流推進運動に参加することで、業界全体での働き方改革や企業イメージの向上にもつながります。「ホワイト物流」推進運動への参加手順は、以下のとおりです。
- 「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトから「自主行動宣言フォーマット」をダウンロード
- 「自主行動宣言」の必須項目への賛同表明
- ポータルサイトに記載の推奨項目を参考に、自社で取り組む内容を選定
- 自主行動宣言を作成し事務局に提出
※参考:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「「ホワイト物流」推進運動について」
ホワイト物流が求められる背景

ホワイト物流が求められる背景は、以下の2点です。
- トラックドライバー不足の深刻化
- 物流の2024年問題による影響
それぞれの内容について解説します。
トラックドライバー不足の深刻化
ホワイト物流が求められる背景の一つが、トラックドライバー不足の深刻化です。厚生労働省の調査によると、2024年におけるトラックドライバーの有効求人倍率は2.37倍であり、全職業平均の1.14倍を大きく上回っています。

画像引用:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」
求人倍率の高さの背景には、長時間労働や賃金水準の低さ、労働環境の厳しさが挙げられます。

画像引用:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
こうした状況を改善するために、政府は「ホワイト物流」推進運動を通じて、業務の効率化や労働環境の改善を進める取り組みを支援しています。企業がホワイト物流を推進することで、人材確保や離職防止につながる労働環境の整備が図れるでしょう。
物流の2024年問題による影響
ホワイト物流が重要視される背景には、物流の2024年問題の影響も大きく関係しています。物流の2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限されたことで、輸送能力の低下が懸念される問題です(※1)。
規制によってドライバーの働き方は改善される一方で、従来の輸送量を維持できなくなる企業が増加すると予測されています。国土交通省の試算では、対策を講じなければ2030年には輸送能力の34.1%が不足する可能性があるとされています(※2)。
このような状況に対応するために、企業は輸送の効率化や積載率の向上など、生産性を高める取り組みが不可欠です。ホワイト物流の推進は単なる労働環境改善にとどまらず、企業の事業継続と社会インフラを守るための必須施策といえます。
※1 参考:国土交通省「物流の2024年問題について」
※2 参考:国土交通省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 中間取りまとめ」
ホワイト物流に取り組むメリット

ホワイト物流に取り組むメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 生産性の向上が期待できる
- ドライバーが働きやすい環境を構築できる
- CO2排出量を削減できる
- 企業イメージの向上につながる
それぞれの内容について解説します。
生産性の向上が期待できる
ホワイト物流に取り組むことで、作業と輸送の両面から生産性の向上が期待できます。積み込み・荷下ろしの待機時間や、無駄な作業時間が発生していた業務が見直されるからです。
たとえば、パレット規格を統一すれば、拠点間での積み替え作業を省略でき、トラック1台あたりの稼働効率が向上します。また、GPS運行管理やAI配車システムの導入により、運行データが可視化され最適な配送ルートの設計が可能です。これによりドライバーの拘束時間を削減しつつ、輸送能力の最大化を実現できます。
ホワイト物流の推進はドライバーの負担軽減だけでなく、人件費の最適化や燃料費の削減、輸送リソースの有効活用にもつながります。
ドライバーが働きやすい環境を構築できる
ホワイト物流の取り組みは、トラックドライバーが働きやすい環境の構築にもつながります。業務の効率化や輸送方法の見直しを通じて、ドライバーの負担となる長時間労働や過重な業務を減らせるからです。
たとえば、モーダルシフト(トラック輸送と鉄道・船舶輸送の併用)を導入することで、ドライバーが十分な休憩時間を確保しながら輸送を分担できます。また、長距離輸送の中間地点に中継拠点を設け、前後区間を別ドライバーが担当する「中継輸送」を採用すれば、一人あたりの拘束時間が短縮され安全性と生産性を両立可能です。
働きやすい環境を構築する取り組みは、「ホワイト物流」推進運動の自主行動宣言項目にも含まれており、国が推奨する標準的な改善策として位置づけられています。ホワイト物流の取り組みを積極的に行うことで、ドライバーの定着率向上や新規採用の促進につながり、企業全体の安定的な輸送体制を築けるでしょう。
CO2排出量を削減できる
ホワイト物流の推進は、トラック輸送に伴うCO2排出量の削減にも大きく貢献します。配送ルートの最適化や積載効率の向上、輸送手段の見直しにより、同じ量の荷物を運ぶ際に必要な走行距離や燃料消費量を削減できるからです。
たとえば、複数企業で共同配送を行えば稼働するトラック台数を減らせるため、燃料消費量の削減につながります。また、AI配車システムを活用して配送ルートを自動最適化すれば、走行距離を短縮しつつ輸送効率の維持が可能です。
ホワイト物流の取り組みは、環境問題の解決だけでなく燃料費の削減や労働環境の適正化による企業価値向上にもつながります。
企業イメージの向上につながる
ホワイト物流への積極的な取り組みは、企業の社会的評価やブランドイメージの向上につながります。トラックドライバーの労働環境改善や輸送の効率化などの取り組みは、企業の社会的責任やESG経営(環境・社会・ガバナンスの観点から成長を目指す経営手法)、SDGs目標達成の観点からも高く評価されやすいからです。
たとえば、ドライバーの労働環境改善に対して積極的な企業であれば、働きやすい職場のイメージをもたれやすくなります。その結果、離職率の低下や求職希望者の増加などの良い影響をもたらすでしょう。
ホワイト物流を実現させる過程にある課題・デメリット

ホワイト物流を実現させるための課題として、以下の2点が挙げられます。
- 人件費の増加が懸念される
- トラックドライバーの労働環境を正確に管理する体制の構築が必要になる
それぞれの内容について解説します。
人件費の増加が懸念される
ホワイト物流を推進する過程では、一時的に人件費が増加する可能性があります。ドライバーの長時間労働を是正することに伴い、同じ輸送量を維持するために新たな人材を採用する必要があるからです。場合によっては、離職を防ぎつつ安定的に人材を確保する目的で、賃金水準を引き上げる必要もあるでしょう。
ただし、一時的に費用が増加しても、業務の効率化や待機時間の削減、配送ルートの最適化などが実現すれば、中長期的にみたとき費用を回収できます。そのため、人件費の増加はリスクというよりも、持続的な労働環境改善への投資と捉えることが重要です。
トラックドライバーの労働環境を正確に管理する体制の構築が必要になる
ホワイト物流を推進するためには、トラックドライバーの労働時間や走行距離などを正確に把握・管理する体制の構築が欠かせません。ドライバーの勤務実態を可視化することで、長時間労働や過重な業務を把握しやすくなるため、早期に改善策を講じられます。
適切な労働環境を構築するためには、運行管理システムやデジタコ(デジタルタコグラフ)、AIを活用した配車システムなど、DXツールの導入が有効です。
しかし、システムの導入には、初期費用や運用費用がかかります。また、システムを適切に運用できる人材の育成も必要です。そのため、抱えている課題の解決策の優先順位を決め、段階的にシステムを導入していくとよいでしょう。
荷主と運賃に関する交渉が必要になる点も、ホワイト物流を推進する際の課題です。ホワイト物流を実現するためには、ドライバーの労働環境改善や設備投資などに一定の費用がかかります。発生する費用を運賃に反映できなければ経営が圧迫されてしまうため、荷主との運賃交渉は欠かせません。
国土交通省では、このような現状を踏まえて「標準的な運賃制度」や「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」を策定し、荷主と運送事業者が対等な立場で交渉できる仕組みを整備しています。
ガイドラインを考慮しつつ、荷主と運賃交渉をする際は以下の点を意識しましょう。
- 「標準的な運賃」を基準として、運送事業者と荷主それぞれが負担すべき運賃の根拠を明確に示す
- 標準的な運賃と、荷役などの付帯作業料を分けて算出し、それぞれの料金を明確に提示する
- 設備投資や労務改善に伴う費用の内訳を提示し、運賃の見直し条件を提示する
荷主にとってもホワイト物流への協力は、サプライチェーン全体の安定化や企業イメージ向上につながるため、相互理解のもとで建設的に話し合うことが大切です。
ホワイト物流に取り組んでいる企業事例

ホワイト物流に取り組んでいる企業を2社紹介します。自社で取り組みを実施する際の参考にしてください。
中継輸送の実施により輸送力の確保を実現|久留米運送株式会社
久留米運送株式会社は、九州を中心に輸送ネットワークを展開する総合物流企業です。
同社では、長距離輸送においてドライバーの拘束時間が長く、法令遵守と人員確保の両立が難しくなっていました。そこで、主要輸送ルートの中間地点に中継拠点を設置し、ドライバーを交代制で運行する「中継輸送方式」を導入しました。
その結果、これまで日をまたいでいた長距離輸送を日帰り運行に短縮でき、ドライバーの負担軽減と稼働効率の両立を実現。さらに、労働時間の削減だけでなく、人材定着率の向上と輸送力の安定確保にもつながっています。
この取り組みは、長距離輸送に課題を抱える他の物流企業でも参考になるモデルケースです。
参考:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「中継輸送の取組事例集」
倉庫内作業を効率化しトラックドライバーの待機時間・作業時間を短縮|株式会社フードレック
株式会社フードレックは、香川県で冷凍冷蔵倉庫業やパックご飯製造を行う企業です。同社は倉庫内作業員の高齢化が進み、作業負担の偏りと効率低下が課題となっていました。
そこで、作業内容を年代別に区分し、年配従業員には負担の少ない工程を中心に担当してもらう仕組みを導入しました。
その結果、トラック1台あたりの入庫作業時間を48%削減、ドライバーの待機時間も50%短縮することに成功しています。
このような作業分担による効率化の取り組みは、資金や人材などのリソースが限られる規模の小さい倉庫業でも導入しやすい改善策といえるでしょう。
参考:「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト「冷凍倉庫業、作業改革について」
ホワイト物流に取り組み働きやすい環境を構築しよう

ホワイト物流の実現は生産性向上やCO2削減、企業イメージ向上などのメリットをもたらします。しかし、人件費の増加や管理体制の構築が必要などの課題も伴います。補助金制度や支援プログラム、DXツールなどを活用して課題を解消し、持続可能な物流体制を構築しましょう。
自社でのホワイト物流の推進にあたって課題や懸念のある場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社独自の輸送網や混載便サービスを活かして、ホワイト物流の実現をサポートします。
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