物流DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?求められる背景や企業の取り組み事例を解説

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
近年、物流業界の課題を解決する手段として、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。物流DXとは、AIやIoT、ロボットなどのデジタル技術を活用して物流業務の改革を進める取り組みです。
物流業界のなかでも貨物輸送を担う運送事業者は、物流DXの推進が求められています。2024年4月に施行されたドライバーの時間外労働の上限規制や人手不足によって、現状のままでは国内の輸送能力が著しく不足する見込みであるからです。
本記事では、物流DXが求められる背景や企業の取り組み事例などについて解説します。
自社の物流業務についてお悩みの場合は、SBフレームワークスにご相談ください。弊社では、独自の物流管理システムを活用した物流代行サービスを提供しています。お客様の課題に合わせた最適なプランを設計いたしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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目次
物流DXとは

物流DXとは、デジタル技術を活用して物流業務の効率化や最適化を図る取り組みです。AIやIoT、物流管理システムやロボットなどを活用して、物流の「見える化」や業務プロセスの標準化を実現します。
現在の物流業界は、深刻な人手不足やEC市場の拡大による小口配送の増加など、業界全体の構造的な課題に直面している状況です。これらの課題を解決して生産性を高めるために、多くの企業が物流DXを推進しています。
また、国土交通省が策定した「総合物流施策大綱(2021年〜2025年度)」では、2025年度までに物流DXを実現している物流事業者の割合を70%にする目標が掲げられています(※)。こうした政策の後押しも踏まえ、物流DXは企業の競争力強化と持続可能な物流サービスの実現に欠かせない取り組みといえるでしょう。
※参考:国土交通省「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」
物流DXが求められる背景とは?業界が抱える3つの課題

物流DXが求められる背景として、以下の3つが挙げられます。
- 人手不足の深刻化
- デジタル化の遅れ
- CO2排出量の削減
それぞれの内容を解説します。
人手不足の深刻化
物流業界では、人手不足が深刻化しています。生産年齢人口の減少や労働者の高齢化が進む一方で、EC市場の拡大により物流需要が増加していることが背景にあります。
とくに、トラックドライバーの人手不足は顕著です。2020年度以降、トラックドライバーの有効求人倍率は上昇し続けています。

画像引用:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」
2025年度においては、全職業平均の有効求人倍率が1.14倍なのに対し、トラックドライバーの有効求人倍率は2.37倍です。求職者が少ない要因としては、トラックドライバーの年間労働時間が他の職業と比較して長いこと、年間所得が低いことなどが考えられます(※1)。
また、2024年4月の労働基準法の改正により、トラックドライバーに年960時間の時間外労働の上限規制が適用されました(※2)。トラックドライバーの長時間労働が抑制された状況下で人手が増えなければ、輸送能力の不足が懸念されます。
対策を講じなければ、2030年度には輸送能力が約34%不足する可能性があると予想されています。そのため、少人数でも効率的に業務を遂行できる体制の構築が求められており、物流DXの推進が不可欠です(※3)。
※1 参考:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
※2 参考:国土交通省「トラック運転者の改善基準告示」
※3 参考:国土交通省「物流の2024年問題について」
デジタル化の遅れ
物流DXが求められる背景には、海外と比べて日本企業のデジタル化が遅れていることも挙げられます。総務省が公表している「令和7年版情報白書」によると、デジタル化に関連する取り組みを「実施していない」と回答した企業は50.4%と半数を超えています。

画像引用:総務省「令和7年度版 情報白書」
物流業界においても書面や電話、FAXなどのアナログな手続きが依然として残っており、業務効率化の妨げとなっています。また、配送先や荷物の種類などが多様で、業務の標準化がしにくい点も課題です。
しかし、デジタル技術を活用することで、複雑な作業プロセスを標準化・単純化し、業務全体の可視化を図れます。さらに、デジタル化した物流データをサプライチェーン全体で共有すれば、企業間の連携強化や最適なリソース配分が可能となります。持続可能で効率的な物流体制を構築するためにも、物流DXによるデジタル化推進が不可欠です。
CO2排出量の削減
地球温暖化による環境問題への対策として、事業活動に伴うCO2排出量の削減が求められています。物流業界では、トラックなどの貨物輸送により多くのCO2を排出しており、環境負荷が大きいことが課題です。
環境省のデータによると、2023年度の運輸部門におけるCO2排出量は、産業部門に次いで2番目に多く、1億9,000万トンにのぼります。輸送機関別では、トラックなどの貨物車のCO2排出量は7,300万トンであり、運輸部門全体の38.3%を占めています(※)。
CO2排出量を削減するためには、走行距離を短縮して燃料消費量を抑えることが有効です。たとえば、AIを活用して最適な配送ルートを算出すれば、無駄な走行を減らし燃料使用量を抑制できます。
その他にも、EVトラックなどの電動車両を導入することで、走行中に排出するCO2の削減が可能です。
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指しています。物流DXによる業務最適化は、その達成に向けた重要な取り組みです。
※参考:環境省「2023年度の温室効果ガス排出量及び吸収量(詳細)」
企業が物流DXを推進するメリット

企業が物流DXを推進するメリットとして、以下の2つが挙げられます。
- 人手不足の解消につながる
- 業務の生産性が向上する
それぞれの内容を解説します。
人手不足の解消につながる
物流DXの推進は、人手不足の解消につながります。デジタル技術やロボットを活用することで、これまで人が担っていた作業の一部を自動化・効率化できるからです。
たとえば、AIを活用して配車計画を自動化すれば、ベテラン社員の経験や勘に頼っていた業務を標準化でき、経験の浅い従業員でも同等の精度で業務を行えるようになります。その結果、従業員一人あたりの負担が軽減し、労働環境が改善されることで人材の定着率が向上するでしょう。
業務の生産性が向上する
物流DXを推進することで、業務全体の生産性向上が期待できます。デジタル技術やロボットを活用してこれまで時間を要していた作業を自動化することで、作業効率を大幅に高められるからです。
たとえば、AIを用いてリアルタイムの交通情報・荷物量・配送先の位置情報などのデータを統合的に分析すれば、最も効率的な輸送ルートを算出できるようになります。その結果、無駄な走行や待機時間を削減でき、燃料費や人件費の最適化にもつながります。
物流DXを推進するうえでの課題

物流DXを推進するうえでの課題は、以下のとおりです。
- 導入費用と維持費用が負担となる
- デジタル人材の確保が難しい
- 業務プロセスを統一する必要がある
それぞれの内容を解説します。
導入費用と維持費用が負担となる
物流DXを推進する際には、デジタル技術の導入に伴う初期投資と導入後のシステム維持にかかる費用が課題となります。とくに、資金力に限りがある中小企業では、導入のハードルが高いといえるでしょう。
国土交通省が物流事業者に対して実施したアンケート調査では、デジタル化の意向をもつ事業者の半数以上が「導入費用の問題」を課題として挙げています。

画像引用:国土交通省「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」
大規模なシステムが導入できない場合は小規模な範囲からDXを始めて、効果測定を行いながら段階的にデジタル化を進める方法が有効です。
デジタル人材の確保が難しい
AIやIoTなどのデジタル技術を理解して活用できる、専門人材の確保が難しいことも課題の一つです。DXの取り組みは物流業界に限らず他の業界でも進展しており、日本企業全体でデジタル人材が不足しています。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の調査によると、2024年度時点でDXを推進する人材が「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した日本企業は85.1%に達しています。

画像引用:独立行政法人情報処理推進機構「DX動向 2025」
物流DXを推進する際は、外部のITベンダーやコンサルタントとの連携に加え、自社内での人材育成や教育体制の整備が欠かせません。
業務プロセスを統一する必要がある
物流DXを推進する際は、業務プロセスの統一と標準化が不可欠です。拠点や営業所ごとに配送管理や運行スケジュールの管理方法が異なるままでは、運行データや配車情報の共有が難しく、システム導入の効果を十分に発揮できないからです。
そのため、各拠点の業務フローを洗い出し、効率的で再現性のある方法に統一することが求められます。ただし、従来のやり方を変えることになるため、従業員から反発が起きる可能性もあります。
標準化の目的やメリットを丁寧に説明し、従業員の理解と協力を得ながら進めることが重要です。
物流DXを推進している企業の成功事例

物流DXを推進している企業の成功事例を紹介します。自社で物流DXを推進するうえでの参考にしてください。
出荷指示のデータ管理化で業務の生産性を向上|浜松倉庫株式会社
浜松倉庫株式会社は、倉庫・運送事業を中心に総合物流サービスを展開する企業です。同社はこれまでFAXで出荷指図書を受領し、従業員が手作業で社内システムに転記しており、転記作業に多くの時間を要していました。
そこで、業務効率化と付加価値向上のために、Web-EDIや専用Webサイトを導入し、出荷指図書の受領をFAXからデータ形式に移行しました。さらに、倉庫管理システム(WMS)を導入し、データをシステム上で一元管理できる体制を構築しています。
これらの取り組みにより業務のデジタル化が進み、生産性が3割向上しています。取引先との情報共有も迅速化し、データにもとづく改善提案や交渉が可能となりました。
参考:国土交通省「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」
労務管理をデジタル化して業務の効率化を実現|菱木運送株式会社
菱木運送株式会社は、千葉県を拠点に運送・物流サービスを提供する企業です。同社では従来、労働時間の管理を手作業で行っており、人的ミスの発生や管理負担の大きさが課題でした。
さらに、改善基準告示によりトラックドライバーの拘束時間・休憩時間が見直されたことで、自己管理では遵守にばらつきが生じていました。
これらの課題を解消するために労務管理システムを導入し、運行管理と勤怠管理をデジタル化しています。システム化により、改善基準告示の内容が会社全体で適切に遵守できるようになりました。
また、ドライバーへのリアルタイム指示が可能となり、運行管理者の業務負担や労働時間の削減にもつながっています。
参考:国土交通省「中小物流事業者のための物流業務のデジタル化の手引き」
物流DXを推進して企業の生産性を向上させよう

物流DXは、深刻な人材不足やCO2排出量の削減など、物流業界が抱える複合的な課題を解決するために不可欠な取り組みです。これまでアナログで行っていた業務を自動化・標準化することで、少ないリソースで企業の生産性を向上させられます。
大規模なシステムの導入が難しい場合は、労務管理や在庫管理など一部の業務からデジタル化を進めていくことが重要です。DXを推進して企業の競争力を高め、持続可能な物流体制を構築しましょう。
物流業務に課題を抱えている場合は、SBフレームワークスにご相談ください。商品の入荷から在庫管理、配送までを一括で代行するサービスや、安全面と環境面に配慮した輸配送サービスなど、お客様の物流業務を支えるサービスを提供しています。
ソフトバンクグループの物流面を30年以上支えてきた実績と経験にもとづいて、課題解決に最適な提案をいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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