物流を自動化するには?メリットや課題、企業事例も紹介

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
EC需要の高まりにより、宅配便の取扱量は増加傾向にある一方で、物流業界は人手不足が深刻化しています。業務負担を軽減して作業を効率的に進めるために、物流業務の自動化を検討している企業担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では物流自動化のメリットや課題、企業事例を解説します。
物流業務の課題についてお悩みの場合は、SBフレームワークスにご相談ください。現行の業務の課題を分析し、最適な改善策をご提案いたします。
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目次
物流の自動化が求められる背景

物流の自動化とは、以下のような物流倉庫での一連作業を自動化する取り組みのことです。
- 商品の入出荷
- 検品
- ピッキング
- 仕分け
- 梱包
近年、さまざまな要因によって物流業務の自動化の必要性が高まっています。自動化が求められる背景には、人手不足の深刻化や配送量の増加などが挙げられます。
人手不足の深刻化
日本では少子高齢化が進んでおり、物流業界は慢性的に若年層の人材不足に陥っています。
また、物流業は長時間労働や重労働といったネガティブなイメージをもたれやすく、人材が集まりにくい点も人手不足の要因として考えられるでしょう。
このような現状を踏まえ、人手不足を補い業務を効率的に進めるために、物流の自動化が必要とされています。
小口荷物の増加
ネット通販の利用者増加により小口荷物が増加していることも、物流の自動化が求められる背景の一つです。
荷量が増えると、物流倉庫での入荷から出荷までの一連の作業量がより多くなります。ネット通販では、日時指定の配送が標準的であり、作業遅れによる納品遅延は許されません。従業員の負荷軽減や納期遅延のリスクを減らすためにも、物流業務の自動化が求められています。
物流業務を自動化するシステムの種類

物流業務を自動化するシステムには、以下のようなものがあります。
- 自動倉庫システム
- 倉庫管理システム(WMS)
- デジタルアソートシステム(DAS)
- デジタルピッキングシステム(DPS)
- 自動梱包システム
自動化したい業務に応じて導入すべきシステムが変わるため、各システムについて理解しておきましょう。
自動倉庫システム
自動倉庫システムとは、入荷から出荷に至るまでの倉庫の一連作業を自動化するシステムです。コンピューターで制御するため、「オートメーションシステム」とも呼ばれています。
自動倉庫システムには、以下のような複数のタイプがあります。
自動倉庫システムの種類 | 概要 |
パレット型自動倉庫 | パレット(荷物を載せる荷役台)単位で荷物を棚に保管するタイプ |
バケット型自動倉庫 | バケット単位で荷物を棚に保管するタイプ |
移動棚型自動倉庫 | 電動で移動する棚を使用し荷物を保管するタイプ |
扱う品物に応じて、適した自動倉庫システムを導入するとよいでしょう。
倉庫管理システム(WMS)
倉庫管理システムとは、倉庫内の業務管理をサポートするシステムです。主に以下のような機能が備わっています。
- 入荷管理
- 出荷管理
- 在庫管理
- 進捗管理
倉庫管理システムの活用により、作業効率や正確性の向上が期待できます。また、在庫状況などがリアルタイムに更新されるため、データの連携漏れなどの人的ミスを防げます。
デジタルアソートシステム(DAS)
デジタルアソートシステムは「種まき方式」とも呼ばれる自動仕分けシステムです。仕分け先ごとにデジタル表示器が設置されており、デジタル表示器に表示された仕分け先に指定の商品・数量を置く仕組みです。
作業者が仕分けリストをもとに出荷する商品を集める必要がないため、商品の取り違えなどのミスの軽減につながります。
デジタルピッキングシステム(DPS)
デジタルピッキングシステムは「摘み取り方式」とも呼ばれる自動仕分けシステムです。商品が保管された棚のランプが点灯し、ランプが光った棚から指定の数量の商品を収集する仕組みです。
作業者は光る棚から商品を取り出すだけなので、スキルに関係なく効率的に作業を進められます。
自動梱包システム
自動梱包システムとは、商品の梱包から送り状の貼り付けまでを自動で行うシステムです。計測機・製函機・梱包機・封かん機など複数の物流機器で構成されます。
自動梱包システムの活用により、以下のような業務の自動化が可能です。
- 梱包サイズの測定
- 段ボールの組み立て
- 商品の詰め込み
- 段ボールの封かん
- 送り状の貼り付け
手作業では時間がかかる梱包作業も、自動梱包システムを利用すれば大量の梱包をスピーディーに行えるようになります。
物流作業を自動化するロボットの種類

物流業務を自動化するロボットには、以下のような種類があります。
- 荷降ろしロボット
- 無人搬送ロボット(AGV)
- 自動棚搬送ロボット(GTP)
- 自律走行搬送ロボット(AMR)
それぞれの自動化ロボットについて解説します。
荷降ろしロボット
荷降ろしロボットとは、荷物を自動で認識し荷降ろしを行うロボットです。荷降ろしは重労働であるため、荷降ろしロボットを使用することで作業者の身体的な負担を軽減できます。
無人搬送ロボット(AGV)
無人搬送ロボットとは、決められた走行ルートに沿って自動搬送するロボットです。事前に決めたルートを倉庫内に設置した磁気レールに沿って自動走行するため、特定の区間で大量の搬送を必要とする倉庫での利用に向いています。
自動棚搬送ロボット(GTP)
自動棚搬送ロボットとは、商品を棚ごとピッキング作業者のもとへ搬送するロボットです。自動棚搬送ロボットを活用すれば、作業者は仕分け場所から動かずに仕分けを行えます。
また、重い台車を引いて倉庫内を行き来する必要がないため、作業者の負担軽減や作業効率の向上につながります。
自律走行搬送ロボット(AMR)
自律走行搬送ロボットとは、障害物を判別して自動で搬送するロボットです。センサーで障害物を検知して避けるため、人が搬送する際に発生し得る衝突事故を防げます。
また、人が荷物を降ろして自律走行搬送ロボットが搬送するといった、共同での作業を行いやすい点も特徴です。
物流を自動化するメリット

物流業務の自動化には、以下のようなさまざまなメリットがあります。
- 作業の効率化に伴う生産性向上
- 人手不足の解消
- コストの削減
- 人的ミスの減少による品質向上
- 労働環境の改善
それぞれのメリットについて解説します。
作業の効率化に伴う生産性向上
ピッキングや仕分け作業を自動化することで、作業時間が短縮され生産性の向上が見込めます。
また、冷凍倉庫など人が長時間作業することが難しい環境においても、寒さに左右されず作業を継続できる点もメリットです。
作業が効率的に進むと、納期遅延のリスク軽減にもつながります。
人手不足の解消
物流の自動化は、人手不足の解消につながります。作業を人の手からロボットに移行することで、24時間稼働が可能となり稼働率を高められるからです。
また、自動化により一定の労働力を確保することで、繁忙期には一時的な人員追加のみで対応でき、年間を通して安定的に労働力を保ちやすくなります。
コストの削減
物流の自動化により、人件費を削減できます。作業をロボットや自動化システムに移行することで、余剰人員を削減でき人件費を抑えられるからです。
また、手戻りせず業務量を多くこなせるようになることで、残業代やミスに伴う廃棄物が減り、結果的にコスト削減につながります。
人的ミスの減少による品質向上
物流業務を自動化することで人的ミスが減少し、作業品質が向上します。自動化システム・ロボットは、精度の高い作業を迅速に行えるからです。そのため、作業者の経験や知識による品質のばらつきを解消できます。
また、作業品質を担保できれば信頼性の高いサービスを顧客に提供できるため、結果として利益の向上にもつながります。
労働環境の改善
物流を自動化することで、以下のような労働環境の改善が見込めます。
- 重い荷物の運搬などの重労働が発生しやすい労働環境が緩和する
- 運搬時の荷崩れなどの危険な労働環境での作業が減り、安全性が向上する
- 自動化で労働力が確保されることで、長時間労働が緩和する
物流業務は体力を要し、危険を伴うこともあるため、それらが離職につながる要因になりやすい側面があります。物流の自動化により労働環境が改善されれば、従業員の定着率向上が期待できます。
物流を自動化するための課題

物流の自動化には、以下のような課題もあります。
- 初期費用・メンテナンスコストがかかる
- システムエラーが発生するリスクがある
メリットだけでなく課題についても把握し、あらかじめ対策を講じておくとよいでしょう。
初期費用・メンテナンスコストがかかる
物流自動化システムやロボットの導入には、高額な初期投資が必要です。さらに、導入後にはメンテナンスコストも発生します。また、自動化システムを扱える人材の採用や教育にかかる人件費も考慮しなくてはなりません。
自動化システムやロボットを導入する際は、事前に費用対効果の検証をしておきましょう。
システムエラーが発生するリスクがある
物流の自動化には、システム障害や停電といったリスクも伴います。とくに、物流作業全体における自動化の割合が大きいほど、不具合が生じた際の業務への影響も大きく、最悪の場合は業務停止に追い込まれる可能性があります。
万が一トラブルが発生した場合に備え、エラー発生時のマニュアル整備やデータバックアップなどの対策が不可欠です。また、自社の自動化システムを滞りなく運用し続けるために、停電対策や定期的な消防検査の実施なども欠かせません。
エラーや停電が発生してしまった際の対処と、トラブルを未然に防ぐ対策の両面から、自動化における課題に対応しましょう。
物流の自動化を成功させるために押さえておくべきポイント

物流業務の自動化には多くのメリットがありますが、ただシステムを導入するだけではうまく活用できなかったり、失敗につながったりする可能性があります。
自動化を成功させるためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 現在の課題を把握し導入目的を明確にする
- 業務フローを見直し、体制を再構築する
- サポート体制を整える
- 効果を検証し必要に応じて改善策を検討する
それぞれの内容について解説します。
現在の課題を把握し、導入目的や導入範囲を明確にする
物流自動化を成功させるためには、現在の課題を把握し、導入目的や導入範囲を明確にしておきましょう。課題と目的を明確化しておけば、不要な自動化の費用や業務フロー変更の手間などが発生するのを防げるからです。
課題と導入目的・導入範囲には、以下のような例が挙げられます。
- 倉庫内の運搬にかかる時間の短縮・作業負担の軽減のために、入荷場所から保管場所まで搬送ロボットを導入する
- 仕分け作業のミスを減らすために、自動仕分けシステムを導入する
業務フローを見直し、体制を再構築する
物流システム・ロボットの導入時には、業務体制を再構築することが重要です。自動化しても、業務フローや人員配置が導入前と同じままでは、効果が十分に発揮されず意味がないためです。
たとえば、以下のような体制の見直しを検討する必要があります。
- 自動化により不要になった業務の人員削減
- システム管理者や問い合わせの受付オペレータなど、新規で必要な人材の採用・教育
また、倉庫内のレイアウトについても、自動化する作業に合わせて最適化しましょう。
サポート体制を整える
物流を自動化する際には、作業者がスムーズに作業を行えるよう、作業者へのサポート体制を整備しましょう。以下のような体制を整えておくと、作業が円滑に進めやすくなります。
- マニュアルを整備する
- 操作方法の勉強会を開催する
- 問い合わせ先を構築する
システム障害や人的なミスなどが発生した際に迅速かつ適切に対応できるよう、作業者がいつでもサポートを受けられる環境を整えておくことが大切です。
効果を検証し必要に応じて改善策を検討する
自動化システムやロボットを導入した後は、想定した効果が得られているかどうかを検証しましょう。以下のような点をチェックし、導入前と導入後の変化を検証します。
- 作業時間や残業時間が減ったか
- 作業ミスが減り品質が向上したか
- 作業効率は上がったか
- 想定した費用対効果を得られているか
効果を得られていない場合は、改善策の検討が必要です。改善に向けて施策を立案する際は、自動化システムをより有効活用できるよう、作業者の意見も積極的に取り入れましょう。
物流の自動化への取り組みで利用できる助成金

物流業務自動化の取り組みで利用できる助成金には、「物流施設におけるDX推進実証事業費補助金」があります。
物流施設におけるDX推進実証事業費補助金は、物流施設における自動化にかかった経費に対し、一定金額を補助する制度です。
補助対象は、倉庫業法の登録を受けた倉庫事業者など特定の事業者です。自動化(DX化)の計画を提出し、評価基準を満たしていると判断された場合に補助金が支給されます。補助額は、自動化の取り組み内容によって異なります。
取り組み内容 | システム構築・連携 | 自動化・機械化機器の導入 |
補助率 | 対象経費の2分の1 | 対象経費の2分の1 |
上限額 | 2,000万円 | 3,000万円 |
最低賃金増加時の上限額 | 2,200万円 | 3,300万円 |
従業員の最低賃金を3%以上または45円以上引き上げる場合は、補助金の上限額が通常枠よりも増額されます。
2025年の公募は6月で終了しました。追加募集が行われる可能性もあるため、国土交通省のサイトをチェックしておくとよいでしょう。
参考:国土交通省「中小物流事業者の労働生産性向上事業(物流施設におけるDX推進実証事業)の公募を開始します!」
物流自動化の企業事例

物流業務を自動化した企業の事例を紹介します。自社の物流業務の自動化に向けて参考にしてください。
ロボット導入で作業負担を軽減|アマゾンジャパン合同会社 Amazon茨木フルフィルメントセンター
大阪府にあるAmazon茨木フルフィルメントセンターは2018年10月に開設され、国内の拠点で2番目に「Amazon Robotics」を導入した物流拠点です。
Amazon Roboticsは、商品棚の下に入り込んで棚を持ち上げ、作業員の前まで商品を運ぶ自動棚搬送ロボットです。Amazon Roboticsの導入によって、作業員が倉庫内を長時間歩き回る必要がなくなり、商品の棚入れや棚出しにかかる時間が削減されました。
自動倉庫型ピッキングシステムで作業効率が向上|イケア・ジャパン株式会社 (IKEA Tokyo-Bay)
イケア・ジャパン株式会社は、家具や生活雑貨の販売を手がける企業です。同社は関東圏を一つの市場と捉え、分散していた小物配送のピックアップ拠点を、千葉県船橋市にあるIKEA Tokyo-Bayの倉庫に集約しました。
業務効率化を図るために、2022年からIKEA Tokyo-Bayの倉庫内に自動倉庫型ピッキングシステム「オートストア」を導入。ピッキングロボットが高密度保管自動倉庫から商品を自動で取り出すことで、従業員が倉庫内を歩き回る必要がなくなりました。導入後、従来の方法と比べて発送作業の効率が約8倍に向上しました。
高度自動化で生産性向上を推進|アスクル株式会社
アスクル株式会社は、事務用品や日用品を中心に通信販売を行う企業です。同社は、物流センターの生産性向上のために、AI・テクノロジーを活用した高度な自動化を進めています。
物流センターでは、GTP(Goods to Person)やパレット搬送AGVなどを導入し、省人化と作業効率の向上を図っています。
ロボティクスの導入で物流業務を自動化|イオンネクスト株式会社
ネット専用スーパー「Green Beans」を運営するイオンネクスト株式会社は、千葉市に大型物流拠点「誉田CFC」を構えています。オンラインでの食品購入の需要拡大に伴い、同拠点では効率的で柔軟なオペレーション体制の構築が課題となっていました。
そこで、課題の解消に向けて、2025年に商品を自動でピッキングする「オングリッドロボットピック」と、注文ボックスの自動積載を行う「オートフレームロード」を導入すると発表しました。
また、人の手で実施していた作業の約30%を自動化し、単純作業や重労働を軽減することで、働きやすい環境の実現を目指しています。
搬送業務の自動化で生産性が向上|ダイキン工業株式会社西日本パーツセンター
空調システム事業を展開するダイキン工業株式会社西日本パーツセンターは、搬送業務の自動化により生産性の向上を実現しています。
業務の自動化に踏み切ったきっかけは、入出庫搬送に時間がかかる課題を抱えていたためです。中物部品の搬送には、最長往復約500mを何度も移動しなくてはならず、作業者の大きな負担になっていました。
そのため、搬送時間の短縮と従業員の負担軽減のために、自動搬送装置(AGV)を導入し、搬送作業を自動化しました。自動搬送装置の導入により生産性が15%向上し、2名相当の省人化の成果が得られています。
参考:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」
仕分けシステムの導入で作業効率が向上|佐川グローバルロジスティクス株式会社
佐川グローバルロジスティクス株式会社は、物流業務のサポート事業を展開する企業です。
同社は、繁忙期と閑散期で業務量に大きな差があることから、作業の効率化と最適化が求められていました。
繁閑差がある現場で効率的に物流業務を遂行するために、自動仕分けシステムを導入。電波により非接触でデータの読み取りができるRFIDタグを商品に付け、RFIDゲートを通すと自動で検品できるようにしました。
加えて、自動仕分けロボットを組み合わせたことで、商品スキャンニングが自動でできるようになり、作業効率の向上を実現しています。
また、自動化により作業品質が向上し、仕分けミスはほぼ発生しなくなりました。
参考:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集」
物流業務を自動化し作業効率を向上させよう

物流自動化のシステムやロボットには、さまざまな種類があります。導入する際には、現状の課題と自動化の目的を明確化しておくことが大切です。
物流の自動化には、人手不足の解消や生産性の向上など、さまざまなメリットがあります。自社の物流業務を見直し、自動化により作業効率を向上させましょう。
物流業務の課題を抱える場合は、SBフレームワークスにご相談ください。物流業界を支えてきた豊富な経験やノウハウをもとにお客様の問題を解決いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
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