物流の環境問題に対する取り組みとは?課題やCO2削減対策の企業事例を紹介

監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
近年、環境問題に対する意識の高まりにより、物流業界ではCO2や大気汚染原因物質の排出量削減など、環境負荷を低減する取り組みが求められています。
一方で「実施すべき具体的な取り組みがわからない」と悩んでいる企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
荷主企業が環境問題に対してできる取り組みはさまざまです。本記事では、その中でも貨物輸送に焦点を当て、物流の環境問題に対する取り組みや課題、企業事例を解説します。
自社の環境問題対策でお悩みの場合は、SBフレームワークスへご相談ください。豊富なエコドライブ実績にもとづき、環境面に配慮した効率的な輸配送を実現いたします。
\豊富なエコドライブの実績にもとづき提案/
目次
物流における環境問題の現状

環境省の調査によると、2022年の運輸部門におけるCO2排出量は、1億9,200万トンです。日本のCO2排出量(10億3,700万トン)の18.5%を占め、工場などの産業部門についで2番目に多くなっています。
輸送機関別のCO2排出量では、トラックなどの貨物車による貨物輸送が最多となっており、運輸部門のCO2排出量の38.0%を占めています(※1)。
トラック輸送は、国内の円滑な物流の維持に不可欠な生活インフラである一方、積載効率が低くなりがちです。実際、トラックの積載効率は、2016年から4割以下の低水準が続いています(※2)。
積載効率が低いということは、本来のトラックの積載能力に対し積載スペースが余っている状態です。結果、同じ量の荷物を運ぶためにより多くのトラックを稼働させる必要があり、燃料消費量が増えることで、CO2を余計に排出してしまいます。
こうした物流の環境問題に対応するには、効率的な物流を維持しつつ、環境負荷を低減する取り組みを行う必要があります。
※1 参考:環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」
※2 参考:経済産業省「令和4年度産業経済研究委託事業調査報告書」
物流業界の環境問題への取り組みと課題

物流業界の環境問題への取り組みと課題について、以下の3つの観点から解説します。
- 他産業部門よりもCO2排出量削減率が低い
- 環境に配慮した輸送方法への転換が求められている
- CO2排出量削減だけでなく大気汚染問題にも向き合う必要がある
物流業界の環境問題への取り組みは進んではいるものの、十分とはいえません。物流業界の取り組み状況を知り、環境問題に対する理解を深めましょう。
他産業部門よりもCO2排出量削減率が低い
物流業界では、貨物輸送の環境負荷の大きさを受け、CO2排出量削減を推進しているものの、他産業部門よりもCO2排出量削減率が低くなっているのが現状です。
現在、日本政府は2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年度までにCO2を含む温室効果ガス排出量を、2013年度比で46%削減する目標を掲げています。
カーボンニュートラルとは、人間の活動による温室効果ガスの排出量から、植樹・森林管理による温室効果ガスの吸収量を差し引いたとき、実質的にゼロになる状態を指します。
運輸部門におけるCO2排出量の削減目標は、2013年度比で35%(部門別の目標削減率)です(※1)。しかし、環境省の調査によると、2022年度の運輸部門のCO2排出量削減率は、2013年度比で14.5%となっています。全部門の中で最も低く、他の産業部門に比べCO2排出量削減が遅れています(※2)。
※1 参考:環境省「地球温暖化対策計画の改定について」
※2 参考:環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」
環境に配慮した輸送方法への転換が求められている
物流業界では、CO2排出量削減率を高めるため、環境に配慮した輸送方法への転換が求められています。
物流業界のCO2排出量の削減がなかなか進まない主な理由は、BtoCのEC市場の成長やBtoBにおける取引先ニーズに応じた多頻度納品により、小口配送が増加しているためです。
小口配送では、一つの配送先に対し少量の荷物を配送するため、トータルの配送回数が増えます。その結果、燃料消費量が増え、CO2が過剰に排出されます。
また、重量が軽い小さな荷物であっても、梱包サイズが極端に小さくなることはないため、トラックの積載能力を持て余してしまうことがあります。こうしたエネルギー効率の悪い運行も、CO2排出量の増加につながりがちです。
その他に、環境配慮型の車両であるEVトラックの導入が進んでいないことも要因として挙げられます。フル充電での航続距離(走行可能距離)の制約が厳しいことや、トラックのような大型で背の高い車両が使える充電ステーションの未整備などの原因により、EV車両の活用が遅れています。
これらの問題を解消するためには、市場が求める貨物輸送ニーズに対応しつつ、環境に配慮した輸送方法へと転換することが重要です。
CO2排出量削減だけでなく大気汚染問題にも向き合う必要がある
自然環境保護や生態系保全の観点からいえば、大気汚染問題も物流業界が取り組むべき重要な課題です。
トラックを含む自動車から出る排気ガスには、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)をはじめとする有害物質が含まれており、光化学スモッグや酸性雨、オゾン層破壊の一因となっています。
CO2に加え、これらの大気汚染原因物質の排出削減にも取り組んでいく必要があるでしょう。
物流の環境問題に対して荷主企業が行える取り組み例

物流の環境問題に対して、荷主企業が行える取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 共同配送の導入
- 長距離輸送のモーダルシフトへの転換
- 環境性能が高い車両の選択
物流の環境問題に対し、荷主企業が貢献できる取り組みはさまざまですが、なかでもCO2排出量の削減に効果的なのは、貨物輸送を環境に配慮した方法へと見直すことです。
それぞれの取り組みを確認し、自社にできることは何かを考えましょう。
共同配送の導入
共同配送を導入すれば、効率的な物流を維持しつつ、環境負荷の低減に貢献できます。
共同配送とは、納品先が共通または近接する複数の荷主企業が協力して、1台の車両に荷物を積み合わせて配送する方法です。
トラックの積載スペースを余さずに荷物を積載できるため、それぞれの荷主企業が個別に配送を行うよりも積載効率が高まり、トラックを効率よく運行できます。その結果、CO2排出量の削減効果が期待できます。
共同配送により、燃料消費量だけでなく運行に必要なドライバーの人数も抑えられるため、物流コストの削減も見込めるでしょう。
長距離輸送におけるモーダルシフトの推進
CO2排出量の削減効果が期待できる取り組みとして、モーダルシフトの推進が挙げられます。モーダルシフトとは、トラックなどの自動車を使った貨物輸送を、より環境負荷が小さい鉄道や船舶などの輸送手段に切り替えることです。
鉄道や船舶は、一度に大量の貨物を輸送可能なため、エネルギー効率が良くCO2排出量を削減できます。国土交通省の資料によると、トラック輸送を鉄道・船舶による輸送に置き換えると、鉄道利用では約90%、船舶利用では約80%のCO2排出量を抑えられるとされています(※)。
ただし、モーダルシフトを実現するには、輸送ロットを大口化しなければなりません。そのため、拠点間輸送などの長距離輸送に適しています。
また、運行ダイヤの制約や積み替え作業が発生することから、輸送スピードが落ちる可能性があります。急な経路・輸送方法の切り替えができないために、事故や輸送トラブルの発生時に柔軟な対応が難しい点もデメリットです。
モーダルシフトを推進する際は、輸送ルートの最適化のほか、トラブル発生時の代替ルートや輸送手段の確保など、サプライチェーン全体を通して物流の効率化を図る必要があります。
※ 参考:国土交通省「モーダルシフトとは」
環境性能が高い車両の選択
EVトラックなどの環境性能が高い車両を選択すれば、貨物車そのもののエネルギー消費量が減り、温室効果ガスや大気汚染原因物質の排出を抑制できます。燃費性能に優れたディーゼルトラックやハイブリッド車両も、環境負荷の低減に高い効果を発揮するでしょう。
また、ダブル連結トラックの導入も選択肢の一つです。ダブル連結トラックとは、トラックの後ろにトレーラーを連結した車両を指します。ドライバー不足への対応策として今後導入が進んでいくと思われますが、輸送が効率化されるためCO2の排出量削減にも有効です。
自社の貨物輸送を運送事業者に依頼する場合は、環境問題への取り組み状況を確認することが大切です。その際は、第三者機関による評価を参考にするとよいでしょう。
たとえば東京都では、CO2排出量削減に取り組む貨物運送事業者を評価する「貨物輸送評価制度」があり、環境問題への対応力が高い事業者を判断する目安になります。また、大気汚染原因物質の排出量削減に取り組む「Clear Skyサポーター」の登録事業者も、環境保護に対する意識が高く、信頼できるといえます。
参考:東京都「東京都貨物輸送評価制度」
参考:東京都「Clear Skyサポーターについて」
物流の環境問題改善に向けてCO2削減に取り組んでいる企業事例

物流の環境問題に対する取り組みを検討する際の参考として、企業の事例を紹介します。
ネスレ日本株式会社|モーダルシフトを推進
ネスレ日本株式会社は、飲料や食料品、菓子類の製造・販売を行っている企業です。
同社では、2010年から物流による環境負荷を軽減するために、モーダルシフトを推進しています。2023年以降は、JR貨物グループと連携し、鉄道輸送のさらなる活性化に取り組みました。
さらに2024年には、食品・飲料業界初となる中距離帯での定期鉄道輸送を開始し、静岡~関西エリアにおいて、1日約200トンの貨物を鉄道輸送に転換することに成功しました。
今後は、年間で約900トンのCO2排出量を削減できる見込みとのことです。
パナソニック株式会社・朝日新聞社|低公害車を活用し共同配送を実施
大手電機メーカーのパナソニック株式会社と朝日新聞社は、低公害車を活用した共同配送を実施しています。
パナソニック株式会社がバイオ燃料を使用したトラック輸送を始めようとしたところ、朝日新聞社が同じ燃料を大口で購入していたことがきっかけとなり、異業種間の共同配送が実現。朝日新聞社の車両を使い、朝刊配送後の帰り便でパナソニック社のパレットや通い箱の荷物を輸送しました。
その後、課題の把握や対策の検討をしながら、輸送品目を拡大していきました。このような低公害車による共同配送により、年間のCO2排出量67トン削減、輸送コスト23%削減に成功しています。
参考:厚生労働省「事例紹介」
物流の環境問題改善のために取り組みを進めよう

物流の環境問題に対し、荷主企業ができることはさまざまですが、なかでも重要なのは環境に配慮した輸送手段の選択です。共同配送やモーダルシフト、環境性能が高い車両の選択などを通して、CO2や大気汚染原因物質の排出量削減を目指しましょう。
自社の貨物輸送に関して課題を抱えている場合は、SBフレームワークスにご相談ください。「東京都貨物輸送評価制度」で三つ星評価を獲得、「Clear Skyサポーター」の登録事業者として認められるなど、豊富なエコドライブの実績があります。環境に配慮した効率的な輸配送により、お客様の物流課題を解決いたします。
\豊富なエコドライブの実績にもとづき提案/
監修者プロフィール

SBフレームワークス マーケティング/広報
玉橋 丈児
物流×輸配送×テクニカルソリューションで、お客様の課題解決を目指すSBフレームワークスのマーケティング担当。テクニカルソリューション分野での実務経験を活かして、弊社のサービスや、業界の話題などを解説いたします。物流技術管理士補。
関連記事
関連お客様事例
サービスの詳細について資料をご用意しております。社内での検討などにご活用ください。
サービスの詳細や料金へのご質問、商談のお申し込みや、お見積りのご相談は、こちらよりお問い合わせください。
SBフレームワークス
マーケティング/広報
玉橋 丈児
SBフレームワークスでは、環境性能の高いディーゼルトラックや、EVトラックを導入しています。燃費管理にデジタルタコグラフを導入し、実走行データを元に運転指導を行うことで、東京都貨物輸送評価制度で7年連続の最高評価を獲得しています。